【プレイバック’15】闇金と一緒の債務者も…豪華で危険な鉄火場「闇カジノ」決死の潜入ルポ

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックを今ふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’15年12月11日号掲載『闇カジノ 豪華で危なすぎる鉄火場に決死の潜入撮』を紹介する。 ’15年11月9日、読売ジャイアンツは野球賭博にかかわったとして3人の選手の解雇処分を発表した。3人の選手は野球賭博や賭け麻雀だけではなく、一般の人間は入れないような「闇カジノ」に出入りしていたことも明らかになり、世間を驚かせた。闇カジノとはどういう場所なのか? 『FRIDAY』記者の決死の潜入ルポだ(以下、《》内の記述は過去記事より引用)。 ◆二重扉の向こうは別世界が広がっていた 《なんの変哲もない白い外壁のビルだ。重い扉を開けると、自然と警戒心が募る。目の前にはさらに鉄製の扉があり、狭い玄関にあるのは天井にぶら下がる監視カメラだけなのだ。だが二重扉を開けると、まったく別の世界が広がる。赤いカーペットに、きらびやかなシャンデリア。100㎡ほどの部屋には、北欧製の花瓶に真っ赤な花がふんだんにいけられている。 「いらっしゃいませ。お飲み物はなんになさいますか?」 スーツ姿の若い女性がたずねる。ビールを注文すると、女性は食べ物メニューを見せながら頭を下げた。 「申し訳ございませんが、テーブルがあいておりません。お食事でもなさって、横のソファでお待ちください」》 当時、闇カジノは全国に100軒ほどあるといわれていた。中にはバカラなどのゲームで、1日に1億円以上のカネが動く店も。もちろん日本では公営競技以外の賭博は違法であり、摘発されれば店側は賭博開帳図利罪、客は賭博罪に問われることとなる。そしてその収益は暴力団の資金源でもあった。潜入ルポの続きを見てみよう。 《30分ほど待つと、8人がけのテーブルに案内された。客たちはときおり「よし!」などと声を出す以外は、黙々と赤や金色のカラフルなチップを動かしている。10年来の常連客が話す。 「主体はバカラです。賭け金によってテーブルは3種類に分かれます。まずはビッグ台とよばれる、一度に100万円まで賭けられる大口客相手の台。次は30万円までの中級者用の台。初心者向けの台の賭け金は10万円までです。闇カジノは都内なら歌舞伎町、六本木、少し離れると横浜や川口などにありますが、同じ場所では1年も営業しませんよ。警察の取り締まりを常に警戒して、摘発される前に引き払ってしまうんです」》 ◆「負けがこんでいる客ほど長居する」 この客の話によると、多くのカジノは24時間営業で、アルコールやタバコ、サンドイッチなどの軽食は無料だという。また、数百万円以上使う上客は厚遇される。ウイスキーなどの高級酒がふるまわれるうえに、送りのタクシーまで用意されるとのことだった。「常に20人ほどの客で混んでいて、2〜3人待ちというのはザラ」だというこのカジノに出入りしているのはどんな客なのだろうか。前出の常連客が続ける。 《負けがこんでいる客ほど、元を取り戻そうと長居します。疲れて眠りそうになる客のため、栄養ドリンクを用意している店もありますよ。客同士が話すことはほとんどないので詳しくわかりませんが、一見の客は少ないと思います。大半が常連。なかには『見たことあるな』という芸能人や野球選手もいます。お互い『社長さん』と呼びあって干渉しません。店が嫌うのはガジリと呼ばれる闇カジノで生計を立てている人たち。彼らは堅い勝負をし、儲けが出るとさっさと帰ってしまうんです」》 出入りは自由だ。しかし、カネの支払いでごねた客が、身長2mもある黒人の用心棒に店の裏に連れていかれて、それ以降見かけなくなるなど、一皮めくればコワイ話は枚挙にいとまがない。また、債務者が一発逆転での返済を狙っているのか、闇金が後ろについている客もいるという。 《「客の後ろに丸イスを持ってきて座っているんですが、債務者の緊張感が伝わってきます。クレジットカードをにぎりしめ、脂汗をかいているんですから。闇金業者はゲームを観戦しながら『よし、行け! ガンバレ!』などと声をかけていますが、債務者にすれば返すカネを勝って作るしかなく必死なのでしょう。脚がガタガタ震えていました」(前出・常連客)》 大金を賭ける客のテーブルには、賭け金をつり上げるために、たいがいサクラがいる。ムキになってカネを賭け、一晩で1000万円以上スッてしまう客も珍しくはない。それでも店は無一文で帰すことはないそうだ。「次こそ勝とう」とまた店に来させるために50万円の負けにつき1万〜2万円を戻すのだという。 闇カジノは、ただの非合法な娯楽施設というだけでなく、顧客から思うがままにカネを吸い上げる、反社会勢力の集金システムの側面もあったのだ。 ◆摘発で闇カジノは減ったが…… ’16年4月にはバドミントン日本代表で当時世界ランク2位だった桃田賢斗、田児賢一両選手が東京・錦糸町の闇カジノに出入りしていたことが報じられたことで、2人がリオ五輪の代表を辞退し、話題になった。また、’17年2月にも、清水アキラの三男・清水良太郎と俳優の遠藤要が、池袋の闇カジノに出入りしたことが報じられて謹慎している。 芸能人やスポーツ選手などの有名人と闇カジノの親和性が高いのは、そういった有名人がお金を持っているうえに、カジノ通いが発覚すると自身が受けるダメージが大きいため、口が堅いからだといわれている。 ’10年代末には警察の摘発などもあって、一時期に比べると闇カジノは減ったといわれる。かわりに’10年代後半から社会に浸透してきたのがオンラインカジノだ。’24年にはオンラインカジノによる賭博での摘発は62件、279人となり、過去最多となった。野球選手や芸能人らの摘発が相次いだことも記憶に新しい。 自分のスマホを使って摘発されることを避けるための〝オンラインカジノができる闇カジノ〟も登場した。10月には新宿・歌舞伎町で、客にオンラインカジノをさせた闇カジノの店長と従業員の男女5人が常習賭博容疑の現行犯で逮捕されている。 国が賭博を厳しく取り締まる一方で、20年以上の懸案だった「日本初のカジノ」がようやく形になりつつある。今年の4月24日、大阪・夢洲の万博会場の隣の土地で、大阪IR(統合型リゾート)の起工式が行われた。この施設にはホテルリゾートや会議場、エンターテインメント施設の他に、カジノも含まれている。ギャンブル依存症を助長する等の理由からいまだに反対の声も多く上がっているが、’30年秋の開業が予定されている。 時代を変え、形を変えても人はやっぱり賭博と縁を切ることはできないようだ。

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