化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件を巡り、経済産業省は14日、警視庁公安部と東京地検が逮捕・起訴の根拠とした曖昧な省令と通達を国際基準に合わせて明確化し、公布した。15日に施行される。 大川原化工機の社長らは2020年、生物兵器の製造が可能な噴霧乾燥器を不正に輸出したとして、外為法違反容疑で逮捕・起訴され、初公判4日前に起訴が取り消された。 生物兵器をつくるには作業者の感染を防ぐ機能が欠かせず、「内部を殺菌できるもの」が輸出規制の対象となっていた。国際基準では殺菌方法は「化学物質」を使うと定められているが、従来の輸出規制省令と通達は殺菌方法を限定せず、解釈の余地が生まれた。 そこに目をつけた公安部は、噴霧乾燥器の付属のヒーターで空だきすれば菌は死ぬという独自解釈「乾熱殺菌」を立て、本来は輸出規制の対象ではない大川原の装置に不正輸出のぬれぎぬを着せた。 今回の改正では「殺菌」を「消毒」に変更し、消毒の方法も「化学薬剤の使用」と明確化した。経産省はこれまでホームページ上で「殺菌の方法は、乾熱殺菌を含むあらゆる方法が含まれる」と公安部解釈に沿った見解を公表していたが、これも削除した。 この冤罪事件を巡っては、東京高裁が25年5月、警視庁と東京地検の捜査を違法と認定し、公安部の独自解釈も「合理性を欠く」と指摘した。これを受け、経産省が省令と通達の改正に着手していた。 経産省安全保障貿易管理課は「これまでの省令と通達には曖昧さがあり、反省している。今後は企業や業界団体とコミュニケーションを密にし、法令の明確化に努めたい」と話した。【遠藤浩二】