玄関ドアを開けると目の前で… 特殊詐欺の受け子と対峙、80代女性の被害を防いだ介護士 きっかけは積み重なった違和感

広島県内で特殊詐欺が多発する中、関係者の機転によって水際で被害を防ぐケースも少なくない。福山市千田町の介護士久保守生さん(50)は、担当する市内の80代女性方で170万円を詐取しようとした「受け子」と対峙(たいじ)し、逮捕につなげた。きっかけは、積み重なった小さな違和感だった。 10月上旬。久保さんは女性方の居間で、業者によるエアコンの取り付け作業に立ち会っていた。帰り際に固定電話が鳴った。女性は子機を手に台所の奥に移動し、深刻な様子で話し込んだ。 戻ってきた女性に尋ねると、電話の相手は埼玉にいる「息子」。前日に「現金が至急必要になった」と連絡があり、この日帰省することになっていた。女性は「帰りが遅くなるらしい。トラブルがあったみたいで、法律事務所の人がお金を取りに来る」と話した。 久保さんは次の訪問先へ向かうため、女性方を出た。だが、何か釈然としなかった。女性は「新型コロナウイルスのせいで息子の声が変わっていた」と語っていた。息子を心配して携帯電話にかけようとした際、「つながらないと言われた」と女性に止められたのも引っかかった。思えば息子は仕事が忙しくて何年も帰省していない。急過ぎないか―。 違和感を拭い切れず、思い切って息子に電話を入れた。すると帰省する予定も、トラブルで現金を必要としている事実もないと告げられた。「念のため、母の様子を見に帰ってください」。焦った声で頼まれた。 女性方を離れて約5分後。急いで戻り、チャイムも押さずに玄関ドアを開けた。女性が封筒から現金を出し、まさに若い男に渡そうとしている時だった。男に名刺を見せるよう求めたが、持っていないという。詐欺と確信した。 「警察を呼ぶ」と伝えると、男は「子どもも妻もいる。自殺するしかない」と許しを請うように語った。「罪は償わんといけんよ」と諭し、110番。駆け付けた警察官に身柄を引き渡し、男は詐欺未遂の疑いで逮捕された。 県警によると、県内で1~10月、特殊詐欺の水際阻止は434件3億2935万円(暫定値)。前年同期比で11件増え、額は7倍に上る。「詐欺は身近なところで起きている」と久保さん。今回の体験を他の訪問先のお年寄りや家族にも伝え、注意を呼びかけている。

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