無実であるのに、犯罪者として扱われる「えん罪」。このえん罪の被害者となった女性が今年1月、岡山市内の高校で特別授業を行いました。 殺人罪に問われて25年もの間、裁判で闘い続けたこの女性。授業を通じて若者たちに何を伝えようとしたのか取材しました。 (※RSK山陽放送が、今年2025年1月〜12月10日まで配信した14,652本の記事のうち、12番目に読まれた記事を再掲しています) 【後編】「社会では普通には生きられない。死ぬまでこのさだめを背負って、冤罪者は生きる」 ■「警察の留置場で、最初に何をされると思いますか?」 (山田悦子さん) 「逮捕されると警察の留置場に連れて行かれますよね。最初に何されるか、どんなことされると思います?」 (高校生) 「警察に向き合って…質問される?」 (山田悦子さん) 「違うの、まず身体検査。真っ裸にされるわけ。肛門の穴まで。私は肛門の穴は調べられませんでしたけどね。すっぽんぽんになるわけです」 ■山田さんは「殺人罪」で逮捕された 特別授業は、岡山操山高校通信制が人権教育の一環として行ったもので、生徒20人が参加しました。講師として招かれたのはえん罪事件の被害者・山田悦子さん(73)です。 事件が起きたのは51年前の1974年。兵庫県西宮市の知的障がい児施設「甲山学園」で園児2人が行方不明になり、園内の浄化槽から遺体で発見されました。 行方不明になった日の当直で、激しく取り乱していた当時22歳の保育士の山田さんが殺人罪で逮捕されました(【画像(4)】は当時の山田さん)。 ■「虚構のストーリー」の調書が取られていく 一方で、「事件は子どもたちが関わった事故なのではないか」との見方もありました。浄化槽の中から鉄のボルトや歯ブラシなどが出てきて、子どもたちが日頃からマンホールのフタを開けて遊んでいたことが分かったからです。 実際に、後の裁判で別の元園児が「女児を浄化槽に転落させてフタを閉めた」と証言しました。 しかし、警察は記者会見で、職員の内部犯行説を打ち出し、それをマスコミが大々的に報道しました。 (山田悦子さん) 「警察のそういう発表(内部犯行説)に、もう『子どもが関与している』なんていえなくなるわけです。だんだん証拠が、虚構のストーリーの調書が取られていくわけです」 過酷な取り調べで、山田さんは一旦は嘘の自白をしましたが、その後、一貫して無実を主張し不起訴処分となります。 (山田悦子さん) 「(不起訴のあとも)『犯人だ、犯人だ』と行き渡っているのです。すさまじい報道でした。全国津々浦々に私が犯人だと浸透している。『逮捕=犯人』報道をマスコミがやってしまいますから」