「警察に捕まった夫」VS「義母との同居を勝手に決めた夫」。家庭崩壊するのはどっち?対照的な2組の結末【作者に聞く】

もしも、あなたのパートナーが警察に連行されてしまったら。その時、相手の無実を信じ抜くことができるでしょうか? X(旧Twitter)で数々の話題作を発表している漫画家の横山了一さん(@yokoyama_bancho)。彼の描く『どちらかの家庭が崩壊する漫画』は、対照的な2つの家族を通して、夫婦のあり方を問いかける作品として注目を集めています。 今回は、物語が大きく動いた「事件」と「決断」のシーンについて、横山さんに制作の裏側を聞きました。 ■詐欺グループをボコって逮捕…それでも妻が夫を信じるワケ 登場人物の一人、毒山(ぶすやま)ゴンは、見た目はいかにもなヤンキー風情。ギャンブル好きで定職にも就いていませんでしたが、主夫として家事や育児に奮闘していました。 しかし、「家族のためにお金を稼ぎたい」という純粋な焦りから、「電話をかけるだけで月100万円」という怪しげな求人に手を出してしまいます。向かった先は、案の定、詐欺グループのアジトでした。 ここで終わらないのがゴンの魅力です。「こういうヤツら(サギ師)が一番嫌いなんだよ…」と激昂し、なんと詐欺師たちを相手に大暴れ。結果、グループもろとも警察に連行されてしまうという事態に発展します。 夫が警察沙汰になり動揺する妻のマリンに対し、ゴンの母親は「ウチのバカ息子とは別れた方がいいんじゃない…?」と、まさかの離婚を提案。しかし、マリンが出した答えは意外なものでした。 「あーし…別れません、ゴンちゃんのこと…信じているから!」 なぜ、マリンはここまで夫を信じられるのでしょうか。作者の横山さんは、その背景にある「信頼」についてこう語ります。 「ゴンは基本的に子煩悩なパパです。たとえ貧乏でも、育児を通じたパートナーへの信頼感が強かったのだと思います」 実は、横山さん自身も息子さんが小さい頃は経済的に余裕がなかったそうですが、夫婦で協力して育児に向き合ったことで信頼関係が深まり、危機を乗り越えられたという実体験が反映されているようです。 ■「妻に決定権はない」エリート夫の暴走 一方、毒山家とは対照的に描かれるのが薬師寺家です。夫のシュウは仕事ができるエリートですが、家事や育児は妻に丸投げ。さらに、アポなしで突撃してくる厄介な義母の存在も火種となっていました。 妻のユイは元々控えめな性格でしたが、マリンのアドバイスを受けて変化します。「我慢せず、おかしいことはハッキリ伝える」ようになり、夫にも「義母とは気が合わないから距離を置きたい」と意思表示をしていました。 夫のシュウも一度は理解したそぶりを見せたため、家庭崩壊は回避されたかに見えました。しかし、彼は妻の気持ちを無視し、義母との同居を勝手に決めてしまっていたのです。 これには温厚なユイも「一緒になんか住まない」と、明確な拒絶を突きつけます。薬師寺家の崩壊が決定的となった瞬間でした。 ■「折れることができない」夫の心理 なぜシュウは、妻の明確な拒否を無視して同居を強行しようとしたのでしょうか。 横山さんは、シュウのような夫の心理について「妻の意見は一応聞くポーズを取るけれど、最終的な決定権は自分にあると考えている」と分析します。 「同じような関係性の家庭は、世の中に結構多いのではないでしょうか。この頃のシュウは仕事も順調で、自信に満ち溢れています。だからこそ、自分の考えを曲げたり、妻に折れたりすることができないんですよね」 警察沙汰になっても揺るがない絆を持つ毒山家と、生活は安定していても心がすれ違う薬師寺家。 元は他人同士が家族になるうえで、大切なのは「対等な話し合い」ができるかどうか、なのかもしれません。 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格が異なる場合があります。

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