「まさにどん底の日々でした」。そう振り返るのは元NHKアナウンサーの塚本堅一氏だ。2016年、危険ドラッグ所持の罪で逮捕されNHKを懲戒免職された。逮捕後はうつ病を患い、社会復帰までの日々は容易ではなかった。自らの経験から「依存症予防教育アドバイザー」として活動する塚本氏。「多様化する依存症に対して、必要なのは2次予防です」と話す。挫折した経験や依存症予防教育のあり方について聞いた。 16年1月、違法薬物である「ラッシュ」の所持、製造で逮捕されました。どのような経緯で逮捕に至ったのでしょうか。 塚本堅一氏(以下、塚本氏):その日はコーヒーを飲んでいた日曜日のいたって平穏な朝でした。ですがその平穏な日常は一瞬で崩れていきました。私が違法薬物で逮捕されたのは16年1月のこと。使ったのは「ラッシュ」と呼ばれる危険ドラッグで、軽い酩酊(めいてい)状態のようになります。禁止される前の学生時代に何度か使用した経験がありました。 所持や使用が禁止されたのは14年です。私自身、違法になったことは認知をしていました。ですが、ネットサーフィンをしていると、たまたま海外のサイトにあった「懐かしのラッシュに似た効果を合法で」という広告に目が留まり、軽い気持ちでクリックしてしまいました。 ●ステップアップの年、暗転 当時の私はNHKのアナウンサーになって13年目。地方勤務を経たのち、念願だった東京のアナウンス室に配属され、帯番組を担当するなど、ステップアップを果たした年でした。今思い返すと、環境が激変する中、ストレスへの対処や発散がうまくできていなかったのかもしれません。 他人に悩みを話すのはもともと苦手。休日の飲酒量は増えていました。送られてきたキットでラッシュをつくってみると、出来は60点くらいで「ハマる」ほどではなかった。ですが、ちょっとしたご褒美感覚で、購入を続けていました。 そんなある朝、急にチャイムが鳴ると「役所の者です。ドアを開けてください」と予期せぬ声が。玄関の前には麻薬取締官が立っていました。家宅捜索の後、違法薬物の所持・製造の疑いで逮捕状が出されたのです。「まさか自分が捕まるなんて」。ただぼうぜんとするしかありませんでした。