暴走するトランプ大統領の「ドンロー主義」…大国の勢力圏分割に向かうのか

20日に就任1年を迎える米国のドナルド・トランプ大統領が、この1年間に国際社会に与えた最大の影響は、米国が主導した「自由主義国際秩序」の放棄だ。代わりに、第2次トランプ政権の米国は「米国第一主義」を掲げた。地政学的にはアメリカ大陸全体に対する掌握を試みる「西半球優先主義」であり、その手段は「攻撃と強圧」だ。 3日(現地時間)のベネズエラ侵攻に続き、6日のトランプ政権によるグリーンランド獲得のための軍事力行使の示唆は、これを露骨に示している。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は6日、ハンギョレの質問に対する答弁書で「トランプ大統領は、グリーンランド獲得は米国の国家安全保障の優先課題であり、北極地域における敵を抑止するうえで必須だという点を明確にしてきた」として、「トランプ大統領とそのチームは、このような重要な外交政策目標を追求するために、さまざまなオプションを議論している。もちろん、米軍を活用することは常に最高司令官の選択肢の一つ」だと表明した。英国、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、デンマークの欧州7カ国が「グリーンランドはグリーンランド住民のものであり、デンマークとグリーンランドに関する事案を決める主体はデンマークとグリーンランドのみ」だとする共同声明を出した直後のことだった。トランプ政権はむしろ言葉を強め、正面から対抗する構えを示唆した。 トランプ大統領の西半球優先主義の別称である「ドンロー主義」が本格的に解き放たれ、軍事力を動員した攻撃と強圧を辞さない砲艦外交を21世紀に復活させたということだ。 「モンロー主義は素晴らしいものだが、われわれはそれを大幅に置き換えた。いまではドンロー主義と呼んでいる…われわれは新たな国家安全保障戦略(NSS)のもとでそれを忘れず、米国の西半球支配はもう疑問視されることはないだろう」 トランプ大統領は3日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕についての記者会見で、ベネズエラの行動が「2世紀以上前のモンロー主義にさかのぼる、米国の対外政策の核心原則に違反した」として、このように明言した。モンロー主義は1823年、当時のジェームズ・モンロー大統領が、米国は旧大陸の問題に干渉しない代わりに、欧州の大国もアメリカ大陸の問題に干渉するなと表明した米国の対外政策の原則だ。アメリカ大陸に対する米国の覇権を確認する宣言だった。 モンロー主義は、1989年のパナマ侵攻と翌年初めのマヌエル・ノリエガ総司令官の逮捕などでみられるように、米国の対外政策において一貫して地位を保ってきたが、1991年の冷戦終結後は後退した。しかし、1期目の就任時から中南米に対する影響力回復を重視していたトランプ大統領は、2期目の就任と同時に、グリーンランド、パナマ運河、カナダにおける米国の領有権を主張し、西半球優先主義を示した。ニューヨーク・ポストはこれをドナルド・トランプ大統領とモンロー大統領の名前を合わせた「ドンロー主義」と命名した。 昨年12月4日に発表されたトランプ政権の初のNSSは、対外政策の優先順位をインド太平洋から西半球に転換する「モンロー主義に対するトランプの系論(推論、必然的となる結果)」を明記した。20世紀始め、当時のセオドア・ルーズベルト大統領は、モンロー主義を継承する「ルーズベルトの系論」でベネズエラをめぐりドイツと対決するなど、中南米諸国に対する砲艦外交を正当化した。トランプ大統領はこれを模倣したのだ。米国はNSSで「米国は西半球における米国の優位を回復し、われわれの本土とこの地域全体の核心的な地政学的拠点に対するアプローチを保護」するため、「西半球以外の競争勢力がこの地域に軍隊やその他の脅威となる能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・統制したりすることを許さない」と明らかにした。 ベネズエラ侵攻によって、トランプ大統領のモンロー主義に対する系論は、西半球防衛ではなく侵攻と支配であることが示された。特に、グリーンランドの米国領土化に対する意志はますます露骨になっている。4日の米時事誌「アトランティック」のインタビューでは「安全保障のためにはグリーンランドが必須だ」と述べ、同日、専用機内で記者団に「20日後にグリーンランドについて話す」と述べた。ベネズエラ侵攻を主導したトランプ大統領の最側近であるスティーブン・ミラー大統領次席補佐官は「グリーンランドの未来をめぐり、誰も米国と軍事的に戦うことはできない」として、「力によって、勢力によって統治される現実世界に住んでいる。これは初めから世界の鉄則だ」と、背筋が寒くなるような言葉を述べた。 トランプ大統領はまた最近、「キューバは近いうちにわれわれが語る対象」だと述べ、コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領にも「気をつけろ」と警告した。中米最大の国メキシコに対しても脅迫を加えている。トランプ大統領は3日、FOXニュースに「カルテルがメキシコを運営しており、メキシコに対しては何かが実行されなければならない」と述べた。 解き放たれたトランプ大統領のドンロー主義は、アメリカ大陸を越えた地にも波及するものとみられる。大国が一方的に勢力圏を画定できる先例になったためだ。 ベネズエラの友好国であるロシアと中国は、米国に対する批判の声を高めたが、現時点では一貫して形式的な批判だ。ロシアはウクライナ戦争、中国は台湾情勢において、すでにトランプ大統領の米国と暗黙の取引をしており、ベネズエラ情勢には黙認せざるを得ないのではという疑惑も浮上している。 トランプ大統領は就任前から、ウクライナのドンバス(ドネツク州とルハンスク州)地域の譲歩と、欧州が責任を負う終戦後のウクライナの安全保障案を基本的に追求してきた。台湾問題でも一歩退いた。中国との対決が最優先の安全保障問題だとみなす「優先論者」の中心人物であるエルブリッジ・コルビー国防次官は昨年3月、台湾は米国が戦争をも辞さない「存在論的な」利益ではないと述べた。 中国とロシアにとっては、南シナ海と中央アジアなどに対し一方的に勢力圏を画定する負担が軽減された。また、アフリカや中東などの地では「他の大国がいつでも政権を排除しうる。われわれ側について安全装置を設けよ」として、大国間の影響力の拡大戦争が再発する可能性があると、アトランティック・カウンシルは指摘した。すでに西アフリカのサヘル地域の諸国では、相次ぐクーデター後、ロシアと中国が西側諸国に取って代わり始めている。 トランプ政権のドンロー主義が、米国の掌握力向上と安定につながるかについても疑問だ。20世紀に入り、米国の中南米への武力介入は混乱と災難を招いた。1954年に中央情報局(CIA)が介入したグアテマラの民選政府の打倒は、数十年続く内戦と不安定を招いた。キューバ革命にともなう社会主義政権を打倒しようとする1961年のピッグス湾侵攻は、散々たる失敗に終わり、その後のキューバ・ミサイル危機につながった。1973年にチリのサルバドール・アジェンデ政権を打倒したアウグスト・ピノチェト将軍による軍事クーデターは、数万人が死亡する17年間の独裁を生んだ。ロナルド・レーガン政権は1980年代、ニカラグアのサンディニスタ政権を打倒しようと介入し、イラン・コントラ事件と別の内戦を誘発した。1989年にジョージ・ブッシュ(父)政権はパナマを侵攻し、麻薬密売容疑で最高指導者のマヌエル・ノリエガ将軍を逮捕したが、麻薬問題はなんら解決されなかった。 トランプ大統領のドンロー主義は、米国が追求してきたルールに基づく国際秩序を自ら否定するだけでなく、中南米や他地域でも紛争悪化を引き起こす引き金となる。 デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は5日、米国のグリーンランド掌握の試みについて、「米国が別のNATO加盟国を軍事的に攻撃する瞬間、すべてが停止する」として、「それはNATOそのもの、そして、第2次世界大戦後に提供されてきた安全保障まで含まれる」と警告した。全世界を分割した19世紀の帝国主義列強時代に似た国際秩序がちらついている。 チョン・ウィギル先任記者、ワシントン/キム・ウォンチョル特派員 (お問い合わせ [email protected] )

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