香港「報道の自由」にとどめの一撃 蘋果日報巡る裁判、編集幹部にも禁錮10年の重刑

香港紙、蘋果(ひんか)日報を巡り香港の裁判所が9日に下した判決で、禁錮20年だった創業者の黎智英(れいちえい)(ジミー・ライ)氏(78)だけでなく、元編集幹部らも禁錮10年の重刑を科された衝撃が広がっている。メディアの国際組織は、香港の「報道の自由」にとどめが刺されたなどと非難した。 黎氏と同様、香港国家安全維持法(国安法)の「外国勢力との結託による国家安全危害共謀罪」で有罪となり、禁錮10年の判決を受けたのは蘋果日報の羅偉光元編集長(52)、林文宗元編集主幹(56)ら3人。黎氏と共謀し、同紙などを通じて外国政府に中国や香港政府への制裁を求めたなどと認定された。 禁錮10年は、国安法の国家政権転覆共謀罪で2024年に有罪判決を受けた元香港大准教授の戴耀廷(たいようてい)氏と同じ量刑だ。戴氏は中国の習近平政権から黎氏同様、「反中分子の中の極悪人」と名指しされた人物。3人の量刑の重さがうかがえる。 国安法の「外国勢力との結託による国家安全危害共謀罪」での判決は初めて。今回、香港の裁判所は同罪のベースとなる量刑を「禁錮15年」とする判断を示した。3人が禁錮10年だったのは、黎氏と異なり、罪を認めていたためだ。 特に、メディア関係者が同罪で有罪となった影響は大きい。外国の政治家の取材などをもとに中国を厳しく批判する報道をした場合、禁錮15年の刑を科される可能性はゼロではない。 国安法は外国人や香港域外にも適用されるため、外国メディアも同様のリスクを負うことになった。 香港記者協会の陳朗昇前主席は「羅氏ら編集幹部は報道に忠実であっただけ。それで禁錮10年はクレージーだ」と批判した。 国際組織のジャーナリスト保護委員会(CPJ)は「今回の言語道断の判決は、香港の『報道の自由』の棺に打ち込まれた最後の釘(くぎ)だ」とコメントした。 一方、国安法の施行下、10日付の香港各紙の社説はおおむね中国・香港政府の主張に沿ったものとなった。有力紙、明報は「報道の自由は絶対ではない」とした上で、「黎智英事件の問題は、黎氏が傘下のメディアを政治的闘争の道具に利用し、メディアが順守すべき境界を越えたことにある」と指摘。有力紙のサウスチャイナ・モーニング・ポストも「香港の法の支配が強靱(きょうじん)であることを示した」と強調するなど、国際社会とは見解を異にしている。(藤本欣也)

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