風俗店でのトラブルをめぐり、弁護士ではないにもかかわらず、男性客と示談交渉をしたなどとして、宮崎市内の風俗店店長ら4人が弁護士法違反の疑いで逮捕された。 宮崎放送のウェブ記事(2月12日)によると、4人は共謀のうえ、営業に関わっている無店舗型性風俗店で、店の女性従業員と不同意性交をした客に対して、示談交渉や示談金の受け取りなどをした疑いがあるという。 風俗店では、男性客と女性従業員の間で、いわゆる「本番トラブル」が起こることがある。従業員に代わって店が交渉にあたることには、どんな法的問題が考えられるのだろうか。ナイトビジネスにくわしい林本悠希弁護士に聞いた。 ●性風俗トラブルへの店の介入は「非弁」と判断されることも ──性風俗サービスをめぐり、客と従業員の間で不同意性交トラブルが生じることがあります。従業員の在籍店がトラブルに介入してよいものでしょうか。 性風俗サービスの現場で、いわゆる「本番トラブル」や不同意性交をめぐる問題が生じた場合、店がどこまで関与できるのかは、弁護士法72条が禁じる「非弁行為」との関係で、慎重に検討すべき問題です。 簡単に言えば、非弁行為とは、(1)弁護士でない者(法律上の資格のない者)が、(2)報酬を得る目的で、(3)法律問題について、(4)たとえば当事者の代理人として交渉や手続きをおこなうことです。 ●報酬目的で介入すれば「非弁行為」に該当する可能性 不同意性交のケースは、刑事責任(犯罪)と民事上の損害賠償責任の双方が問題となり得る、まさに典型的な「法律問題」です。 そのため、示談交渉や示談金の受領といった法律事務を、報酬を得る目的でおこなえば「非弁行為」に該当する可能性があります。 具体的には、次のような行為は非弁と評価されやすいです。 ・被害者側に代わって示談の条件を提示する ・示談金額を交渉する(「刑事告訴はしないから」などと述べて金額を交渉する場合も) ・示談書を作成する ・示談金を代理で受領する 一般的に、性風俗サービスの現場では、オーナーが被害女性に代わって客と示談交渉し、客から受け取った示談金を女性と分け合うといった事例もあるとされますが、このようなオーナーの行為は、まさに「非弁行為」と評価される可能性があるわけです。 ●店側が出てきたら客はどうすべきか ──トラブルに巻き込まれた客は、店が交渉に出てきた場合、どのように対応すべきでしょうか。 まず重要なのは、トラブルが生じた際、すぐにスマートフォンなどで録音を開始し、やり取りを保存することです。非弁行為や、場合によっては恐喝にあたる行為の有無を後から検証するための証拠となり得ます。 実際は不同意性交がなかったにもかかわらず、あったかのように主張されている場合でも、このような事後のやり取りの内容が、不同意性交がなかったことを推認させる事情として評価される可能性があります。 ●示談書への署名、示談金の支払いは慎重に ──ほかに気をつける点はありますか。 その場の雰囲気に流されて、安易に店側が用意した示談書に署名したり、示談金を支払ったりすることは避けるべきです。可能であれば、その場では結論を出さず、いったん立ち去ってから弁護士に相談し、自身の立場や法的リスクを客観的に整理することが望ましいと思います。 ナイトビジネスにおけるトラブルは、刑事責任、民事責任、さらには弁護士法の問題が複雑に絡み合います。感情的になりやすい局面ではありますが、店舗側と客側のいずれにとっても、専門家の法的助言を得ることが重要です。 【取材協力弁護士】 林本 悠希(はやしもと・ゆうき)弁護士 大阪大学高等司法研究科卒業、2018年弁護士登録、大阪弁護士会所属。2021年1月P&M法律事務所を設立。離婚・男女問題、交通事故、相続・遺言、刑事事件などに注力。弁護士になる前は歌手を目指していた。 事務所名:P&M法律事務所 事務所URL:https://pandmlo.com/