TBS日曜劇場『リブート』で、2人の主人公を演じ分けている鈴木亮平。妻を殺されたパティシエの早瀬陸と、早瀬の妻を殺したのではないかと思われる悪徳刑事・儀堂歩という、全くタイプの異なる男性を見事に演じ分けている鈴木。 第1話で、松山ケンイチが演じていた早瀬は、妻・夏海(山口紗弥加)殺害の濡れ衣で逮捕され、追い詰められた末に、儀堂に“リブート”することに。早瀬は儀堂が死んだものと思っていたが、第4話で儀堂は生きていたことが発覚。次回の第5話では“儀堂vsニセ儀堂”の直接対決が描かれることになり、同じ場面で鈴木が2人の儀堂に扮するのが見ものだ。 心優しい早瀬は、命がけで夏海を殺した人物を暴き、濡れ衣を晴らして、愛する息子・拓海(矢崎滉)のもとに戻ろうと奮闘している。パティシエとしての誇りを持ち、48年続く老舗の「ハヤセ洋菓子店」の味を守りたいと思っている早瀬。 一方、警視庁捜査一課の儀堂は、裏社会組織と繋がっている悪徳刑事で、100憶相当の商品を盗んで逃亡している。まだ謎の多いキャラクターではあるが、早瀬とは正反対のタイプであることは間違いない。 そんな中身が全く違う2人を、鈴木は同じビジュアルのまま演じ分ける。直接対決する第5話からは、同場面で視聴者に違和感なく2人が別人だと認識させなければならない。より一層、鈴木の演技が凄みを増してくることに、改めて期待が高まる。 鈴木は『リブート』で2人の主人公を演じることについて、「今作での一番の挑戦は、『演技とは何か』という問いに向き合うことでした。それは同時に、“俳優という職業”そのものと向き合う時間でもありました。別の人間になりきるための方法、やりがちなミス、そして役が自分と同化していくあの感覚。自分がこれまで俳優として経験してきた『演技あるある』も、この作品には随所に散りばめられています」(※)とコメントしている。 本作は、鈴木にとって、まさに俳優業の転機のひとつになったのではないだろうか。そう感じるくらい、演じる上で気を配ることが多い難役だと思う。 中学生の頃に、俳優になりたいと思うようになったという鈴木。大学生時代に、演劇サークルで芝居をするようになり、2006年から本格的に演技を学び始めた。その際、鈴木が師事したのは、2013年に56歳という若さで他界した俳優・映画監督の塩屋俊。筆者が鈴木を知ったきっかけは、2010年公開の塩屋監督作『ふたたび swing me again』なのだが、この映画はこれまでに何度も観ている大好きな作品だ。 以前、鈴木にインタビューする機会があった際、そのことを伝えたところ、それほど幅広く知られている映画ではないのにと、少し驚いた様子だった。鈴木は、塩屋監督が彼に演技というものを教えてくれた師匠であったこと、そして塩屋から学んだ演技方法は、彼の“コア”になっていて、それを自分流にアレンジしながら、今でもずっと続けていると教えてくれた。 『リブート』をはじめ、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2021年)、『下剋上球児』(2023年)に主演するほか、『天皇の料理番』(2015年)、『テセウスの船』(2020)など、何度も日曜劇場に出演しており、NHK連続テレビ小説『花子とアン』(2014年度前期)ではヒロインの夫役、NHK大河ドラマ『西郷どん』(2018年)では主人公役と、鈴木の名演技を観られる作品は多々ある。 映画も、『エゴイスト』(2023年)、『花まんま』(2025年)など、鈴木の主演代表作は数多く、日本を代表する名俳優の1人と言っても過言ではないだろう。その中でも『ふたたび swing me again』は、彼の俳優人生の初期の作品で、記念すべき映画初主演作。鈴木は、ストーリーが進むにつれて、成長していく主人公を好演しており、筆者は何度観ても心をつかまれる。もしも、観られる機会があったら、ぜひこの映画で鈴木の“コア”を感じてほしい。 『HK/変態仮面』シリーズ(2013年、2016年)や、『シティーハンター』(2024年)のようなコミカルな要素のあるアクション映画での振り切れた演技や、任侠バイオレンス映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)での徹底した悪役ぶり、前出の『天皇の料理番』での壮絶な役作りなど、さまざまなジャンルの作品で、主演・助演問わず、名演技を披露している鈴木。 俳優として進化し続けている鈴木が、「“俳優という職業”そのものと向き合う時間」となったと語るほど、濃密な演技を見せ、視聴者を楽しませているドラマ『リブート』。本日放送される第5話での、同場面での彼の一人二役が楽しみでたまらないし、ドラマが後半へと向かう中、どのような結末が待ち受けるのか、ラストまで鈴木の名演技を堪能したい。 参照 ※ https://realsound.jp/movie/2025/10/post-2201363.html