謎の芸術家バンクシーは英ブリストル出身の男性、 「デービッド・ジョーンズ」とも

Simon Gardner James Pearson Blake Morrison [13日 ロイター] – 世界各地に作品を残している謎の芸術家バンクシー。ロイターは関係者への取材や資料に基づき、バンクシーは英南西部ブリストル出身の男性ロビン・ガニンガム氏だと結論づけた。 バンクシーの弁護士マーク・スティーブンス氏はロイターに対し、書面で「(バンクシーは)貴社‌の問い合わせに含まれる詳細の多くが正確であるとは認めていない」と述べた。バンクシーの正体について肯定も否定もせず、取材内容を⁠公表すればバンクシーのプライバシーを侵害し、芸術活動に支障をきたし、危険にさらすとして、公表を見送るよう要請した。 ロイターは、プライバシー侵害というバンクシーの主張、彼のファンの多くが匿名性の維持を望んでいるという事実を考慮した。報道活動で適用するあらゆる基準に照らしつつ、文化、アート業界、​そして国際的な政治的議論にも深く永続的な影響力を持つ人物の素性や経歴を理解することについて、公衆が深い関心を持っていると判断した。 <宝探し> 四半世紀にわたり、バンクシーはいつでもどこにでも現れ、誰にも気づかれないという印象を植え付けてきた。美術史家でバンクシー専門‌家のウルリッヒ・ブランシュ氏は、彼の正体を探ることは「宝探しのようなもの」だと語った。 バンクシーが「バンクシーへと変貌する直前」の1990年代に同氏と4年間交際したというエマ・ホートン氏がロイターの取材に応じた。ホートン氏は、バンクシーの名前や付き合うきっかけなどは明らかにしなかったが、ホートン氏との書面の形のやり‌取りのなかで自分を名乗るのに本名から「ミスター・バンクス」、「バンク‌シー」へと変えていったと話した。 <手がかり> 2000年9月、バンクシーはニューヨークで、建物の屋上の看板を「汚している」として現行犯​逮捕された。逮捕に関連する裁判記録や警察の書類によるとロビン・ガニンガムという名前の男が自供していた。 04年、ピーター・ディーン・リカーズというジャマイカ人写真家との出会いによって、バンク‌シーの匿名性は崩壊寸前までいった。リカーズ氏はジャマイカで制作中のバンクシーの写真を21枚投稿。同年7月、その写真のうち1枚がイブニング・スタンダード紙に「ついに正体判明」という見出しで掲載された。 08年7月、英紙ザ・メール・オン・サンデーが、‌バンクシーに関する調査記事を掲載。バンクシーを1973年生まれでブリスト​ル出身のアーティスト、ガニンガムだと初めて特定した。 だが不思議なことに、08年のメール・オン・サンデーの報道以降、彼の足取りは途‌絶えた。英国の公的記録にはガニンガムの痕跡は見つからなかった。 ロイターは、バンクシーに関する過去の声明、彼とかかわった企業等膨大な公開記録を集め、データを検索し、他の公開記録と照合した結果、バンク⁠シーが名乗ったと思われる名前を特定した。それは英国で最も一般的な名前の一つ「デービッド・ジョーンズ」だった。 <2022年 ウクライナ> 2022年後半、ウクライナの首都キーウ郊外の村ホレンカ。爆撃で破壊されたアパートの建物に、1台の救急車が停まり3人が降りてきた。うち2人は顔をマスクで覆い、1人はグレーのパーカーを着て、もう1人は野球帽をかぶっていた。この2人は車から段ボール製のステンシルを持ち出し、アパートの内壁だった場所に⁠テープで貼り付け、スプレー缶を取り出し、作業を始めた。バンクシーだった。 壁画が登場した後、バンクシーは自身のイン​スタグラムに動画を投稿し、それらの作品が自分のも‌のであることを認めた。その映像には、ホレンカでグレーのパーカーを着た画家の姿も映っていた。 入国手続きに詳しい情報筋によると、22年10月28日にデービッド・ジョーンズはウクライナ入りした。情報筋が明かしたジョーンズのパスポートに記載された生年月日はロビン・ガニンガムの誕生日と一致した。 同情報筋によると、記録上、ジョーンズは22年11月2日にウクライナを出国している。 バンクシーの正体⁠が明らかになった場合、彼の作品の価値にどれほどの影響を与えるだろうか。ロイターは十数カ所の主要なギャラリー、美術館、オークションハウスを取材した。⁠大半はバンクシーに関するコメントを控えたが、回答した人たちの見解は分かれた。 バンクシーの作品を取り扱う最大手のディーラーの一つ、アコリス・アンディパは、顧客が作品に惹かれるのは「彼が仮面⁠を被っているからでも、ロビン・フッドのようなキャラクターだからでもない」と述べた。 ギャラリーオーナー兼ディーラーのロバート・キャスターライン氏は、バンクシー作品の市場価値が下落する可能性があるとみてい‌る。実名が明らかにな⁠ったことへのバンクシーの対応について「彼がどう切り出すかによる」と述べ、「彼が次に何を作り出すか、そして誰かがそれを壁に飾りたいと思うかどう​かにかかっている」と述べた。 バンクシーの作品の半分はスプレーを使ったステンシルで「驚くようなことは何もしていない」。それでも「彼はメディアが夢中になるような手法を確立した。あの神秘性を生み出したのだ」とキャスターライン氏は語った。

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