目隠しの記憶、確信なき復讐 「シンプル・アクシデント/偶然」ほか シネマプレビュー 新作映画評

公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ◇ ■シンプル・アクシデント/偶然 米やイスラエルと紛争が続くイランは、体制による過酷な国民弾圧で知られる。同国を舞台にジャファル・パナヒ監督が「正義」の危うさを描き、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した。 かつて政治犯として投獄されたワヒド(ワヒド・モバシェリ)が、自分を拷問したエグバルらしき男(エブラヒム・アジジ)を見つけ、仲間と復讐(ふくしゅう)を試みる。 「ワヒドらは獄中で目隠しをされていたため、エグバルの顔を知らない」というヒネリが効いている。人違いを主張する男を前に、彼らの怒りは輪郭が定まらず、復讐が奇妙に迷走する様子をスリルとユーモアを交えて描く。血も凍るような結末が秀逸。仏、イラン、ルクセンブルク合作。 8日から全国順次公開。1時間43分。(耕) ■グランド・イリュージョン/ダイヤモンド・ミッション イリュージョン(マジックやトリック)を駆使し、不正や犯罪で私腹を肥やした富裕層から富を奪い、腐敗を暴く正義の犯罪集団「フォー・ホースメン」の活躍を描く「グランド・イリュージョン」シリーズ第3弾。 今回のミッションは、犯罪に手を染める企業が所有する史上最高価値のハートのダイヤを盗み出すこと。新世代のマジシャンも加わり、ニューヨークやアブダビなど世界を舞台に強奪劇が繰り広げられる。 厳重なセキュリティーをかいくぐり、現代の義賊たちが大衆の面前で堂々と盗む華麗なイリュージョンの妙技を大画面で楽しみたい。 監督は「ヴェノム」のルーベン・フライシャー。米映画。8日から全国公開。1時間53分。(啓) ■霧のごとく 政治活動や言論の自由が厳しく制限され、「白色テロ」と呼ばれる市民の逮捕・投獄が横行した戒厳令下の台湾。兄を処刑された少女が、遺体引き取りのため台北へ。困難にぶつかるが、国民党軍の元軍人で台湾に留まった気の良い人力車夫に助けられる。 監督・脚本はチェン・ユーシュン。ラブストーリーの傑作「1秒先の彼女」からは様変わりしたシリアスな歴史物だ。兄が書き残した童話の言葉が切ない。台湾の背景を知って見るほうが良いに決まっているが、そうでなくとも見る人を物語の中に引きずり込んでしまう。ユーシュン監督の手腕は相変わらずさえ渡り、まなざしは優しい。秀作だ。台湾映画。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加