ガードレールが突き刺さったままのバス。 警察は14日から事故を起こしたこのバスを本格的に調べています。 先週水曜日(6日)、新潟の北越高校の男子ソフトテニス部員20人が乗車し、遠征に向かう途中で起きた事故。高校3年の稲垣尋斗さんが亡くなりました。 逮捕された若山哲夫容疑者(68)はこれまでに「体と運転に不安はなかった」と供述していましたが、新たに、衝突の直前、ハンドルを切るなど事故を回避する行動をとっていなかったとみられることが捜査関係者への取材でわかりました。 また、若山容疑者は4月に2回、運転免許を返納するよう警察に促されていたということです。 さらに4月から少なくとも5回は事故を起こしていたといいますが、若山容疑者は… (若山容疑者) 「直近の事故歴はない。」 警察の調べにこう話しているということです。 その一方で、当時のバスの走行について乗車していた生徒からは「事故前に縁石に乗った」「トンネル内でこするような事故もあった」という証言がでています。 身の危険を感じた生徒は車内から動画を撮影。そこには、車線をはみ出して走行するなど“危険な運転”が映っていたことがわかっています。 その“恐怖”は事故当日、生徒たちのLINEにも残されていました。 (ソフトテニス部部長) 「ついた人から荷物ね。」 朝、部長からこう指示があったのち、バスは午前5時半ごろに福島県に向けて学校を出発します。 しかし、乗車から30分もたたないうちに、内容は緊迫したものに変わります。 (ソフトテニス部部長) 「みんな大切な人に連絡しとけ。」 その14分後には…。 (ソフトテニス部部長) 「おまえらシートベルトしとけ。」 部長から部員に送られていたのは“命を守るため”の指示でした。 事故直前には家族に「死ぬかも」という趣旨のメッセージを送っていた生徒もいたといいます。 そして事故後にはバスに乗っていなかった部員からも連絡が送られていました。 (休みの部員) 「無事なやつ返事できたら返事して。」「大丈夫か。」 (バスに乗車 部員) 「稲垣さん以外意識あります。」 またバスに乗っていた生徒の保護者によると、若山容疑者は出発後、新潟県から福島県に向かう磐越道ではなく、別の高速道路に乗ってしまい、一度高速を降りるなど道を間違えることがあったといいます。 乗車していた生徒たちは「高速道路やガードレールが怖い」「バスには二度と乗りたくない」などと話しているといいます。 ドライバーの運転に危険を感じた際、バスの乗客には対応する術はないのでしょうか。 きょう(15日)、私たちが訪ねたのは浜松市を中心に貸切バスの運行を行う遠州鉄道の研修センター。こちらの会社のバスには、乗客の安全のために導入した最先端の設備が… (記者) 「こちらのバスには、一番前の座席の天井に非常ブレーキが設置されています。」 貸切バスの一部に設置されている「非常ブレーキスイッチ」です。 (記者) 「ドライバーの運転に異常を感じた場合、乗客はこちらのスイッチを押すことができます。実際に押してみます。」 (警報音) 「ピピピピ…」 バスに自動でブレーキがかかりハザードランプやクラクションなどで周囲にも異常を知らせることができます。万が一ドライバーの運転に危険を感じた場合に、このボタンを押すことで乗客がバスを止めることができるのです。 安全対策は他にも… こちらは貸切バスの位置情報を把握できるシステム。 さらにバスに設置されたドライブレコーダーの映像もリアルタイムで確認できるため、運転手や乗客にトラブルが発生した場合でも、本部にいる責任者が迅速に対応することができるといいます。 一方、福島の事故では高校とバス会社の間で見積書などの書面を交わしていなかったことが明らかになっています。 (遠州鉄道 牧田靖弘課長) 「こちらが貸し切りバス最終の確認書になります。」 遠州鉄道では、例えば学校が貸切バスを利用する場合、事前に見積書などを必ず取り交わすといいます。 その上で学校側とスケジュールや運賃、バスの車種などを記入した「最終確認書」を交わすなど、繰り返しチェックする体制が構築されているのです。 こちらの会社では主に県西部にある学校の部活動から依頼をうけていますが、福島での事故には疑問を感じるといいます。 (遠州鉄道 牧田靖弘課長) 「正直ずさんとしか言いようがないかなと思っていますし、安全を最優先する事業者としては選任されていない運転者を派遣するとか、確認をしないというところについては、一言でいえば“ありえない”と考えています。」 また、事故を起こした若山容疑者は、客を乗せて運転するのに必要な「2種免許」を持っていませんでした。これについても遠州鉄道の担当者は厳しく指摘します。 (遠州鉄道 牧田靖弘課長) 「2種免許については客から運賃をいただく以上、道路運送法の知識が必要となりますし、高度なテクニックも必要です。最高峰の免許という意識をもって安全に努めるべきと考えています。」 さまざまな安全対策を導入しているこちらの会社に、学校などの利用者側に求めたいことをたずねると… (遠州鉄道 牧田靖弘課長) 「人件費の高騰や安全コストが上がってるので、2年に1回運賃を改定しています。客の安全を確保するためのコストと認識してほしい。」 生徒の安全な輸送を確実なものにするためにも学校とバス会社の双方が安全への意識を高めることが早急に求められます。 <スタジオ解説> (徳増ないるアナウンサー) はい、事故の前にバスに乗っていた生徒がやりとりをしていたメッセージですが、本当に胸が痛みます。 「みんな大切な人に連絡しとけ」、また「おまえらシートベルトしとけ」といったLINEのメッセージがありました。この言葉には死の恐怖を感じていたのかもしれないということが読み取れますが、森さん、他に大人がいない中で生徒たちの恐怖というものは相当なものだったでしょうね。 (前静岡県副知事 森 貴志さん) そうですね。このコメント以外にも「死ぬかも」と、それが如実に表しているのではないかと、非常に死の恐怖というものを感じているのではないかと思います。 基本的に安全運転のためには、整備された車と、それからしっかりした運転手のこの2つが揃わなければならない。今回のケースの場合には運転手がそうじゃなかったケースがバスの中で起こったと。その時にこれだけ冷静な制度もいらっしゃる中で、運転手を制御できないという状況では、やはり、バスの中に大人といいますか、そういう指導する人間がそこにいると、いないと、そこの違いが大きく今回出てしまったんじゃないかというふうに思います。 (徳増アナ) そうですね。そして今回の事故はレンタカーでしたが、県内で安全への対策に力を入れているバス会社では、客が非常時にバスを止められるスイッチがあったり、またリアルタイムで運行状況が確認できるシステムがあったりと、津川さん、さまざまなこうした対策が安心につながりますね。 (元衆議院議員 津川祥吾さん) というか、本来、貸切バスにしろ乗り合いバス、通常の路線バスにしろ、運行管理というのを会社がしっかりやるんですね。運行工程もそうですし、ドライバー、運転手さんの健康管理もします。そういったことが大前提であって、それに加えてこういった機械的な非常ブレーキなども、さらに追加をしていこうという流れをやっていますけれども、今回の福島の事故は、全く状況が違うので、一緒にするべきではないと私は思いますけれども、 ただ、関係ないからということではなくて、言ってみれば、“他山の石”として、全てのバス会社の皆さんも改めて安全管理をしっかりやっていただく必要があるのかなという感じがしますね。