香港警察は24日、政府への憎悪を煽(あお)る目的で出版物を販売したなどとして、国家安全条例(国安条例)違反の疑いで2人を逮捕し、書籍などを押収した。香港メディアによると、逮捕されたのは九竜地区の独立系書店「ハンター書店」を経営する黄文萱(こう・ぶんけん)氏(33)ら。海外の政治組織から資金援助を受けた疑いももたれているという。 黄氏は民主派の元区議会議員。香港の大手書店や公立図書館には置いていない1989年の天安門事件や香港民主活動家の本も取り扱う独立系書店を2022年から経営してきた。ハンター書店は、香港で数十店あるとされる独立系書店の中心的存在だった。 香港政府は、20年施行の香港国家安全維持法(国安法)によって反政府デモなどを抑止し民主化運動を弾圧。その後も、ネットや報道、出版、文化などを通じて中国・香港政府を攻撃する「軟対抗」(ソフトな抵抗)への警戒を強め、国安法を補完する目的で24年に施行された国安条例などで取り締まりを進めている。当局が「軟対抗の拠点」(中国系メディア)の一つとみていたのが同書店だった。今後、軟対抗への弾圧が加速する恐れがある。 ハンター書店はこれまでにも香港政府職員による立ち入り検査を何度も受けてきた。黄氏は昨年6月、産経新聞の取材に「恐怖を与えようとしているだけ。罪を犯しているというのなら逮捕すればいい」と自己規制することを拒否し、覚悟の上で言論・出版の自由を守る意思を強調していた。 同書店では、国安法違反などの罪で禁錮20年の判決が確定した香港紙、蘋果(ひんか)日報の創業者、黎智英(れい・ちえい)氏の伝記も販売していた。黄氏が逮捕された6月24日は、業務停止に追い込まれた蘋果日報の最終号が発行されて5年に当たる日だった。(藤本欣也)