中堅国は目下、競ってAIの軍事利用に乗り出している。今のところはドローン用コンピュータービジョンや標的選定など用途を限定した運用計画が大半を占めるが、米中の有力AI企業が開発する最先端の汎用モデルが防衛部門に導入されるのも時間の問題だろう。 問題は欧州や東アジアの中堅国がどこからAIを調達するか、だ。米政界は党派を問わず各国の動きを注視している。トランプ米政権の「AI行動計画」は同盟国と友好国に自国モデルを輸出することが「必須」とし、失敗すれば「わが国のライバル」、つまり中国のモデルが選ばれることになると警告している。 だが中堅国にすれば、アメリカへの過度の依存には懸念が付きまとう。トランプ政権が主要AI企業の株式保有を検討しているとなると、なおさらだ。今の雲行きでは中堅国にアメリカ製の軍事AIの採用を促しても、過去の武器輸出のようにはすんなりいきそうにない。次世代の軍事力もアメリカの技術が支えるのか、それともアメリカの影響力は相対的に低下するのか。 各国が自国の今後の防衛をどんなAIに託し、どう活用するのかはざっくり言えば3つの選択肢がある。 第1は最先端の汎用AIをサイバー作戦から指揮統制、兵站(へいたん)まであらゆる防衛の側面にフル活用するというものだ。こうした技術を入手する最も手っ取り早い方法は、オープンAIやアンソロピック、グーグル・ディープマインド(いずれもアメリカ勢だ)など最先端モデルを開発する主要AI企業と契約を結ぶことだ。 こうした動きは既に進んでいる。英政府はディープマインドと国家安全保障などに関する覚書を締結。オーストラリア企業とオープンAIとの契約では防衛も対象部門に入っているし、NATOは米軍が戦闘支援に運用する「メイブン・スマート・システム」(アンソロピックのAIが統合されている)の導入を決めた。 第2の選択肢は小規模の汎用AIの導入だ。一部の中堅国は既に国産モデルの開発に注力しており、フランスはパリ拠点のスタートアップ企業ミストラルが開発したAIを全軍で運用する予定だ。カナダ軍も自国のスタートアップ、コヒアが開発したAIを採用。インドは「AI主権」確立に数十億ドルを投じる方針だ。 アメリカのメタ、中国のディープシークやアリババ、フランスのミストラルなどオープンウェイトモデルの開発企業と提携する動きもある。オープンモデルは一般的に軍事利用が禁止されているものの、正式な提携契約を結べば、運用・技術支援付きで無制限の利用が可能になる場合もある。 とはいえ、現在のオープンモデル市場では人気と性能の両面で中国勢が優位だ。フランスも米中双方に過度に依存せずAIを軍事利用する手段として、ミストラルを欧州内外の同盟国や友好国に売り込んでいる。 第3の選択肢は、用途を絞った特化型AIを戦術的に利用することだ。 この3つ以外に、パランティア・テクノロジーズやアンドゥリルなど防衛分野に特化した米テック企業と提携し、最先端AIへのアクセスと技術支援や運用支援サービスを一括して受ける方法も考え得る。ウクライナやイスラエルがいい例だ。 もっとも専門家に言わせれば、軍事的優位を確立するには高度な技術の導入以上に、巧みな運用が鍵を握る。イスラエルはAIを使ってガザ全域で監視を行い、攻撃目標を選定してきた。ただしこのやり方は誤認逮捕や民間人の死亡につながったと報じられており、こうした技術の信頼性や失敗した場合の責任の所在といった問題を突き付けた。 軍事AI戦略の有効性は各モデルの性能や強みが、その国の軍事目標に適しているかどうかに左右される。例えば国境防衛など目標が限られている場合は、計算能力が低い特化型モデルで十分だろう。 それでも現時点の能力をはるかに超える高度な汎用AIモデルが、いずれ軍事に不可欠な存在になることは十分に考えられる。アメリカはモデルの性能、投資額、計算能力、人材など、最先端AIの主要な指標の全てで世界をリードしており、他国にとってアメリカ製以外のモデルを選ぶハードルは高い。