加藤金融相、貸金庫のあり方「金融庁も検討」 三菱UFJ銀の事件で

三菱UFJ銀行の貸金庫から顧客の金品が盗まれた事件で、同行の半沢淳一頭取は17日朝、報道陣の取材に応じ、「お客様、関係者の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけしていることを改めて心よりおわび申し上げる」と述べた。事件の舞台となった貸金庫ビジネスについては、3月までをめどに撤退も含めて一定の方向性を固める意向を示した。 三菱UFJ銀は16日、金融庁に事件の原因や再発防止策をまとめた報告書を提出し、半沢氏を含む役員5人の報酬減額処分を発表した。半沢氏は「社会的な影響の大きさに関する責任を重く受け止めて実施する」と説明。「被害に遭われたお客様への対応、再発防止策の実行・徹底を通じて信頼回復に努めることで経営責任をしっかり果たしたい」として、引き続き陣頭指揮を執る姿勢を示した。 三菱UFJ銀は今後の貸金庫ビジネスのあり方を検討中で、「撤退も一番極端な選択肢として置いている」(半沢氏)。同行の貸金庫は約13万人の利用者がいるほか、民家を狙った強盗事件が相次ぎ、一定のニーズが寄せられているのが実情だ。 ただ、利用者の高齢化で利用件数は減少している。半沢氏は「貸金庫固有のリスクや事業採算などの観点で検討を進め、一つのメドとして3月までにはいろんな選択肢から一定の方向性を見いだしたい」とした。 貸金庫のリスクの一つとして、銀行側が中身を把握できない点が挙げられる。三菱UFJ銀は株券や重要書類、貴金属などを保管対象と規定しており、現金の記載はない。ただ、今回の盗難被害の多くは現金で、以前から「貸金庫がマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税の温床になりかねない」との指摘があった。 このため、加藤勝信金融担当相は17日の閣議後記者会見で、マネロン対策として金融機関は疑わしい取引の届け出やリスクに応じた顧客管理が求められると指摘。「貸金庫サービスのあり方について、金融庁としても検討していく必要がある」と述べた。 事件を巡っては、警視庁が14日、元行員の今村由香理容疑者(46)を窃盗容疑で逮捕した。今村容疑者は東京都内の2支店で約4年半にわたって貸金庫業務の管理を任されていた。被害に遭った顧客は現時点で約70人で、被害総額は約14億円に上る。【浅川大樹】

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