ドラマ「VIVANT」では自衛隊の秘密部隊「別班」と中国系の秘密組織「シンシー」との攻防が描かれる。静岡大学教授の楊海英さんは「私も北京第二外国語学院の大学院生だったころ、諜報活動を目撃したことがある。現在は、日本にいる関係者に対する協力への圧力がもっと強い。2017年施行の国家情報法によって、情報活動への協力が義務と定められているからだ」という――。■ポケモン、コナンも中国メディアの批判の的に TBS系の日曜劇場「VIVANT」は、自衛隊の秘密部隊「別班」の活躍を描く人気ドラマ。今年7月に始まった第2シーズンでは、中国系の秘密組織「シンシー」が敵役として登場し、別班員や日本の公安職員を拘束して拷問にかける。 10月25日、国営の中国中央テレビ(CCTV)は公式SNSに論評を載せ、「旧日本軍の拷問を中国人になすりつけているドラマ」と非難。翌26日には共産党系の新聞「環球時報」が、同ドラマは「中国を中傷し、『中国脅威論』を誇張している」と指弾。自衛隊による海外での越境的な行動を美化し、役割の境界をあいまいにしているとも論じたという。 中国の官製メディアが日本の娯楽作品をやり玉に挙げるのは、初めてのことではない。今年2月には、ポケモンや名探偵コナンが中国軍系メディアに「軍国主義の浸透」と糾弾され、各地のイベントでコスプレが禁じられたという報道があった。 TBSの龍宝正峰社長は定例会見で「国家間の対立をあおる意図はない」と述べ、寄せられた意見は真摯に受け止めるとした。■諜報活動を目撃した経験 私は中国の内モンゴル自治区で生まれ育ち、学生時代から中国の工作員と接したことが何度かある。総参謀部の元工作員から通訳の心得を学んだことや、スパイ養成機関といわれる大学で急に改名した女子学生がいたことは、前回の記事で紹介した。 「VIVANT」の主人公・乃木憂助は、日本の大手商社に勤めている。表向きの職業を隠れ蓑に、別班員としての任務を進める。 現実には、逆の例を聞くことが多い。普通の会社員、公務員などが諜報機関の罠にはまり、断りきれずに、あるいは軽い気持ちでスパイ活動に取りこまれていく。 かくいう私も、諜報活動をこの目で見たひとりだ。 相手は、中国の国家安全部である。