広島県福山市の住宅で2001年、住人の女性(当時35)が殺害された事件で、殺人罪などに問われた無職竹森幸三被告(70)=同市=に対する裁判員裁判(後藤有己裁判長)の初公判が30日、広島地裁で始まった。竹森被告は「記憶にないからわかりません」と述べ、弁護側は「竹森さんは犯人ではありません」と無罪を主張した。 起訴状によると、竹森被告は01年2月6日昼、女性宅の玄関から侵入し、腹部を果物ナイフで突き刺すなどして殺害したとされる。 事件の捜査は難航し、「コールドケース(長期未解決事件)」となっていた。発生から20年を経て逮捕されたのが、竹森被告だった。 広島県警は21年、別の銃刀法違反容疑で竹森被告から任意でDNAを採取した。鑑定の結果、殺害現場に残されていた血痕のDNA型と一致したという。 竹森被告は逮捕当初、「記憶にない」と容疑を否認したが、その後認めたとされる。ただ、弁護側によると、捜査段階での自白調書について、地裁は「任意性がない」として証拠採用しなかったという。 公判では、逮捕の決め手となったDNA型鑑定結果の評価が争点となる。 弁護側によると、県警によるDNA型鑑定は逮捕前に3回実施された。個人差が表れる部位を最も多い24カ所調べた3回目の鑑定では、現場に残された血痕と竹森被告のDNA型は2カ所で一致しなかったとして、血痕は別人の可能性があると主張する方針。 広島地裁は全5回の期日を指定した。検察側は、証人としてDNA型鑑定の専門家を出廷させ、血痕は竹森被告のものだと立証する方針。2月6日に結審し、判決は同12日に言い渡される予定。(根本快) ■事件をめぐる経緯 2001年2月 広島県福山市の住宅で、女性(当時35)が殺害される 2010年4月 殺人罪などの公訴時効を廃止する改正刑事訴訟法が成立・施行 2021年10月 竹森幸三被告を殺人容疑で逮捕 11月 竹森被告を殺人と住居侵入罪で起訴 2025年1月 広島地裁で初公判