不動産大手のプレサンスコーポレーション元社長が業務上横領罪で大阪地検特捜部に起訴され、後に無罪が確定した冤罪(えんざい)事件を受け、違法・不当な取り調べの防止を考える沖縄弁護士会主催のシンポジウムが1日、那覇市内であった。登壇した冤罪被害者で元社長の山岸忍さんと弁護人の秋田真志弁護士は、検事の見込み捜査の危うさを指摘。「冤罪を防ぐには弁護人の立ち会いしかない」と訴えた。 事件は大阪府の学校法人の資金21億円の業務上横領事件に絡み、同社社長だった山岸さんも共犯とされ、2019年12月に大阪地検特捜部に逮捕、起訴された事案。21年10月に大阪地裁は無罪を言い渡し、同地検が控訴を断念した。 山岸さんは取り調べ担当検事とは「世間話ばかりで、逮捕当日も(調べ室を出て)会社に戻ろうと思っていた」という。突然、いわれなき嫌疑をかけられた衝撃を振り返った。 業務上横領罪に問われた元部下らが検事の意に沿うような供述を強いられ、山岸さんは共犯に仕立てられていた。「勾留中に元部下のうその供述調書を見たときは吐き気を催した。調書をぐちゃぐちゃにして壁に投げつけた」。山岸さんは独房で人間不信に陥ったという。 無罪確定後、違法な取り調べがあったとして国家賠償請求訴訟を起こしたが担当検事たちに反省はなく、「信用できない人間の集まりだと思った」と語った。 秋田弁護士は「捜査官の頭には圧力をかけることで真相が語られるという思い込みがあり、そこで虚偽が生まれている」と批判。取り調べ中の弁護人の立ち会いは必要で、今後法整備の流れは不可避との見方を示した。 パネルディスカッションでは元検事で熊本弁護士会の熊澤孝一弁護士も登壇。黙秘権の告知の在り方、冤罪事件が起きた際の検察側の検証なども含めた改善策を提起した。(社会部・城間陽介)