昨年12月、大阪高等裁判所は、強制性交罪に問われた滋賀医科大学の学生2名に対し、無罪を言い渡した。別の裁判で審理された学生1名については一審大津地裁が言い渡した懲役5年6月の実刑判決がすでに確定しており、この2名についても一審では懲役5年・懲役2年6月の実刑判決が下されていたことを考えれば、かなり大きな「考え直し」が起きたということになるだろう。判決の報道を受けて、裁判長を批判する意見がSNS上で多く投稿され、また判決に抗議する署名活動がオンライン署名サイト「Change.org」で始まるなどの動きがあり、こちらも注目を集めていた。 確かに国の機関による決定だというだけで内容を問わず正しいものと考えるとか、不満があっても黙って受け入れるという姿勢が正しいわけではないだろう。この国のあり方を最終的に決めるための主権を持っているのが国民である以上、不当だと感じられる判断にはそのように主張し、再考を促し、変えるための手段を講じるべきだと、一般的には言えるのではないか。 だが本件に関する限り、判決を不服とする人々の行動は(Change.orgにおいて賛同の署名を求めていた抗議文の内容が、変更箇所を明記せず、かつ変更履歴も残さずに何度も修正されていたので、そもそも何に対して賛同を求めていたのか判然としないとか、被告人の弁護団のようなごく限られた人間しか正確な判決内容を把握できていない時点であったにもかかわらず、SNS上でなされた不正確な情報発信に基づいて行動したなどの些末な点を除いても)あまり適切だとは考えられない。そしてそうした判断はまた、このようなSNS上のムーブメントに対して、多くの法律家が示した姿勢でもあった。それは何故なのだろうか。