ロシアでは伝統的に「アネクドート」という文化がある。政治風刺などの小話を意味し、有名な例では「ある男が赤の広場で『○○(時の指導者の名が入る)はばかだ!』と叫び、逮捕された。『侮辱罪ですか?』と尋ねた男に警察官は答えた。『国家機密の暴露罪だ』」といった風だ。 最近、ロシアの大学関係者と話していた際、ウクライナ戦争の早期終結を訴えるトランプ米大統領の再登板後、彼の大学で一つのアネクドートが流行していると聞いた。「トランプが戦争を終わらせられる確率は50%だ。戦争は終わるか続くかしかないからだ」というものだという。旧ソ連時代から存在する「現代で恐竜に出合える確率は50%」というアネクドートを改変したものだという。 できのよい作品とは到底いえないが、トランプ氏の復権により、過去3年間にわたる戦争の終結について露国内の関心が高まっていることを示唆しているように思え、興味深かった。 プーチン露大統領は安易な譲歩には応じない姿勢を打ち出しており、本当にトランプ氏が戦争を終結に導けるかどうかは分からない。ロシアに押し切られ、ウクライナの立場を無視する形で和平プロセスを進めれば今後の国際秩序に深い禍根を残すだろう。事態の進展を適切に伝えていきたい。(小野田雄一)