裏金問題、旧統一教会追及…朝日新聞の報道とデジタル化

2024年度の新聞協会賞を受賞した朝日新聞の「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」を担った「自民党派閥裏金問題取材班」。その中心メンバーが東京社会部司法担当の板橋洋佳デスクだ。報道当時は司法クラブのキャップで、裁判や検察の動きを担当記者たちと追っていた。 板橋デスクは2010年、大阪社会部時代に、大阪地検特捜部が証拠品のフロッピーディスクのデータを捜査の見立てに合うように改ざんした事実をスクープした記者だ。その板橋デスクに、一連の朝日新聞の自民党裏金問題の報道について話を聞いた。 「この“政治とカネ”の問題は、最初に『しんぶん赤旗』が独自調査のうえで2022年に紙面で報道し、それを神戸学院大学の上脇博之教授が刑事告発しました。これがきっかけで捜査が動き出しており、この調査報道に敬意を持っています。 私たちのきっかけは、2023年11月頃に、特捜が動いているようだという情報をキャッチしたことです。その意味で社会部の司法クラブが突破口になってはいるんですが、その後、編集局の総力をあげて一連の報道に取り組みました。 報道の重要な使命のひとつは、権力構造による不正を監視することです。長年指摘されながらも繰り返される“政治とカネ”の問題に、全力で向き合い、解明しなければいけない。そうした思いが出発点でした」 朝日新聞が最初に大きく報じたのは、23年12月1日、1面トップの「安倍派裏金1億円超か パー券不記載 立件視野 ノルマ超分 議員に還流」だった。 「その報道の数日後、政治部などとの合同会議で議論し、それぞれの分野で課題やテーマを抽出し、多面的にこの問題に取り組むことを確認しました。その後の動きとしては、政治部は派閥のひずみや政治責任を問う。社会部は捜査当局の動きを追うとともに、仮に当局が立件しなくても調査報道で裏金の実態を明らかにしていく。並行して、政治資金規正法の抜け穴を指摘する。また経済部は、企業献金する側、パーティー券を買う側を追いかけました」(板橋デスク) 朝日新聞は連日、裏金問題を大きく展開した。12月2日には「裏金化 安倍派議員側も」、そして8日は「松野官房長官に1000万円超 裏金か パーティー収入還流」という、独自取材にもとづく記事を掲載した。 その後も9日「安倍派6幹部 裏金か」、10日「松野・西村・萩生田氏 更迭へ」、12日「安倍派裏金 5億円か」と続く。なかでも10日の記事は、安倍派幹部が一掃される大きな転換点となる、政治部による特報だった。 「私たちは初報の段階から、安倍派の裏金作りが組織的であり継続性も悪質性もあるということに焦点をあてました。松野官房長官の記事では、捜査当局の立件対象にはならなかったものの、その重大性から関係者の取材を通して金額も詳報しました」(同)

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