再審請求巡る審理に必要な「重要記録」の原本、最高裁に届かず 滋賀・日野町事件

滋賀県日野町で1984年に起きた「日野町事件」で、服役中に亡くなった阪原弘さんの遺族が無実を訴えて裁判のやり直しを求めている再審請求を巡り、大阪高裁が2023年2月に再審開始を決定し、これを不服とする検察側が特別抗告してから1年半にわたって、審理に必要な訴訟記録原本が最高裁の手元になかったことが分かった。 検察の特別抗告から、6日で2年になる。審理は最高裁で始まっているが、裁判所は訴訟記録の原本を基に再審を開始するか否かを判断するため、1年半の遅れが手続き長期化の要因となっている可能性がある。阪原さんの弁護団は「裁判所は訴訟記録がなければ、判断しようがないはず。最高裁も最高検も緊張感がない」と対応を疑問視している。 阪原さんの弁護団や関係者から入手した資料によると、訴訟記録の原本を保管している検察側に対し、最高裁が原本借用を書面で依頼したのは、検察の特別抗告から約9カ月たった23年12月1日だった。検察側からは、その約9カ月後の24年9月9日付で最高裁に貸し出されたという。 刑事確定訴訟記録法は、事件の訴訟記録の原本は一審を担当した検察庁が保管すると定めている。京都新聞社の取材に対し、最高裁は訴訟記録の借用を求めるまでが長期にわたった理由を「回答できない」とした。最高検は貸し出しに9カ月かかった理由について、弁護側の提出文書に対する意見書を「記録を精査しながら作成した」からだと説明。「裁判所の審理を不当に遅延させたとは考えていない」とした。 弁護団長の伊賀興一弁護士は「最高裁はすぐに訴訟記録を取り寄せるべきだった。手元に記録を置き、生の資料に当たらない限り、審理はできないはずだ」と話す。 再審制度は手続きの長期化が問題となっている。阪原さんの長男弘次さん(63)は「まるで放置されているようだ。もっと真摯(しんし)に審理を進めてほしい」と訴える。 迅速審理進めるべき 元裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)の話 最高裁と最高検の対応はどちらも遅すぎる。再審無罪となった袴田巌さんの事件をはじめ、これだけ再審の長期化が問題視されているのだから、優先度を高くして、時間を区切るなど迅速に審理を進めるべきだった。これまで続けてきた旧態依然とした再審請求審の進め方をしているという印象だ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加