南米ボリビアのエボ・モラレス元大統領(65歳)は2月27日、26年間指導してきた与党「社会主義運動党(MAS)」を離党し、議会に代表者を持たない小規模政党「勝利のための前線(FPV)」に移籍することを正式に発表した。この決定は、8月17日の大統領選に向けたものであり、MASからは現大統領のルイス・アルセ氏の出馬が決まっているためだ。だがモラレス氏はすでに2期の大統領任期を満了しており、現行憲法では選挙出馬資格がないとされている。 同氏は、ボリビア初の先住民出身の大統領で、先住民指導者として左派政党MASを四半世紀に渡ってけん引してきた。彼は、かつての同盟者であるルイス・アルセ現大統領による「司法的迫害」を主張しており、昨年10月から自身の政治的拠点であるコチャバンバ県のチャパレ地域に身を寄せ、支持者の庇護を受けている。2月27日付カルタ・カピタルなどが報じた。 モラレス氏は1998年からMASを指導してきたが、同党は内部で「モラレス派」と「アルセ派」に分裂しており、昨年11月には憲法裁判所が党の指導権を、アルセ氏を中心とする指導部に譲渡した。これにより、モラレス氏とアルセ氏との関係は悪化したとされる。 モラレス氏は、自身が政権を握っていた2016年に、未成年者に対して性的虐待を行い、妊娠させたとして、人身売買の罪で検察から正式に告発された。だが、捜査段階であった昨年10月に出された出廷命令に応じず、逮捕状が出された。さらに今年の2月にはタリハ市の裁判官が再度出廷を命じたものの、欠席したため、2度目の逮捕状が発行された。 モラレス氏は、この逮捕状がアルセ政権による「司法的迫害」であり、選挙を控えた政治的な意図があると主張し、自身のXに「私を追い詰め、瞬時に有罪にしようとするのは、アルセ政権に従属した、偏った『司法』であり、その司法機関はすべて支配されている」と投稿。 未成年者人身売買の疑いの裁判中、ネルソン・ロカバド判事は「モラレス氏が反乱を起こした」と宣言した。これ関して、モラレス氏自身は「この宣言は審理の前にすでに作成されていた。おそらく元政権が関与する政府機関、例えば司法省から発信されたものだろう」と述べ、アルセ政権との確執が一層明確になった。