前兵庫県議・竹内英明さんはなぜ死に追い込まれたのか 今西憲之[ジャーナリスト]

ニュースでその一報を知った時はただ絶句するしかなかった。 「なぜあの竹内さんが…」 ただ茫然とするしかなかった。 1月18日、前兵庫県議の竹内英明さんが亡くなった。姫路市の自宅で自殺を図ったとみられている。 昨年3月、元県民局長のW氏の「内部告発」から混乱が続く、兵庫県の斎藤元彦知事。内部告発には斎藤知事のパワハラや「おねだり」や「背任罪」で刑事事件として告発されているものなど7つの項目が記されていた。 兵庫県議会では、昨年6月に地方自治法に基づく強い調査権を持つ百条委員会(文書問題調査特別委員会)を設置。竹内さんは、そのメンバーに入っていた。 昨年9月、県議会に不信任案決議を可決された斎藤知事は「失職」を選択し、再度知事選となった。当初は劣勢を予想された斎藤知事だったがSNSを駆使した選挙戦で一大ブームを巻き起こし当選。 その“影の立役者”とされたのがNHKから国民を守る党の党首、立花孝志氏。 「私に1票を入れないで、斎藤さんに」 と呼びかけ「2馬力」の選挙ではないかと批判された。 また立花氏は、百条委員会で斎藤知事を追及していた奥谷謙一委員長の自宅を訪れ、マイクを手に、 「奥谷出てこい」 とインターホンを鳴らし、 「あまり脅して奥谷さんが、自死しても困る」 と語るシーンが今もSNSに残っている。また、竹内さんと並んで、斎藤知事を追及していた県議の丸尾牧氏の名前をあげて、 「事務所にも行きます、当たり前」 と「突撃」をも示唆するような発信を行っていた。 県知事選がはじまった当初は普段通り、明るくエネルギッシュな竹内さんだった。 しかし、選挙戦が中盤に差し掛かると、電話がつながらなくなる。何度か電話をかけるとようやく話ができ、 「立花氏がSNSでいろいろ書き込み、それが拡散している。事務所手伝っている妻が脅しのような電話に苦慮している」 「立花氏は私だけならまだしも、うちの家族まで襲撃するような勢いで動画を流している。それを真に受けて、立花氏の支援者から、電話など嫌がらせがすごいんですわ。あれはなんとかならんもんですか」 「Xとか、SNSを見るのも怖いので、アカウントを削除しようと思っている」 と、これまでの竹内さんとは思えない弱々しい声だった。 竹内さんは11月17日、斎藤知事が当選した翌日に、県議会へ辞表を提出し、辞職してしまった。 昨年12月に竹内さんと話せた時は、 「本当にごめん、百条委員会を最後までできなかった。あんたの書く、独自の記事はやっぱりさすがや。ペンの力で頑張って。影で応援しているし、いくらでも協力はするから」 そう話していた。 竹内さんと同じ「ひょうご県民連合」の上野英一幹事長は、 「立花氏のSNS発信で竹内さんもご家族もまいってしまい『もう政治を県議を、辞めて』と懇願され辞表を出したそうです。まさに言葉の暴力で、こんなことが許されていいのか」 と語っていた。 また、竹内さんと同様に立花氏からSNSで拡散された丸尾氏はこう話す。 「立花氏がSNSで私の批判を書き込み拡散させると、うちにも変な電話はかかってくるし、不審な車が事務所周辺をうろつくなどありました。また注文していない商品が届くなどもあった。SNSであまりにひどい内容を記載しているものは、発信者情報開示を請求。削除されたものもありますが、今現在も残って拡散されているものがあります。竹内さんと同様、私の顔写真入りで、事実無根の内容が記されている。竹内さんには『少し休んでまた一緒に』と連絡をしてはげました。まさかこんなことになるとは」 昨年7月の東京都知事選で小池百合子知事に次ぐ、2位に食い込み注目をされた石丸伸二氏のSNS展開。斎藤知事も同じ手法が成功して、当選。その一方で竹内さんのような悲劇を生んだ。 「竹内さんは、百条委員会では抜群の手腕を発揮していた。よけいに彼を失ったことが悲しい」(前出・上野氏)

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