トランプ政権、反イスラエルデモ主導の元学生を拘束 米永住権を剥奪「国外退去に」

【ワシントン=大内清】米移民・税関捜査局(ICE)は10日までに、パレスチナ自治区ガザの戦闘を巡って全米で昨年広がったイスラエルへの抗議デモのリーダー格だったコロンビア大学元院生のパレスチナ人男性の身柄を拘束した。「デモ参加者はイスラム原理主義組織ハマスの支持者」だと決めつけ、外国人には国外退去処分を科すとするトランプ大統領の方針に沿った動き。言論の自由や法の適正手続きなどを巡り論争を呼ぶのは必至だ。 トランプ氏は10日、男性の拘束は「これから続く多くの逮捕の最初だ」と自身の交流サイト(SNS)に投稿。反イスラエルデモに参加することは「テロ支持で反ユダヤ主義的かつ反米的な活動」だと主張し、「米国のすべての大学は(国益と政権の外交方針に)従うべきだ」と述べた。 拘束されたのは、昨年春にコロンビア大で起きた学生デモで大学当局側との交渉役となったマフムード・ハリール氏。ICE捜査員が8日夜に同氏が住む東部ニューヨークの学生アパートに踏み込んだ。ハリール氏は米永住権(グリーンカード)を持つが、ルビオ国務長官は9日にX(旧ツイッター)に「ハマス支持者を米国から退去させられるよう永住権や査証(ビザ)を剥奪する」と書き込んだ。 ICEを管轄するノーム国土安全保障長官は10日、「デモに関与した他の学生も特定し(ハリール氏に対してと)同じ行動をとる」と述べた。 米メディアによると、永住権剥奪には、犯罪への関与などを示す証拠や移民裁判所での審理といった手続きが必要。だが、米公共ラジオ(NPR)がハリール氏の弁護人の話として伝えたところでは、ICE側は令状の有無を明らかにせず、同氏の拘束時には永住権の無効化を一方的に告げたという。 コロンビア大は「アイビーリーグ」と呼ばれる米東部の名門私立大学群の一つ。昨年春、イスラエルのガザ攻撃や米政府のイスラエル支援に抗議するデモが発生し、デモ隊が校舎の一部を占拠するなどした。デモは米各地の大学に広がり、授業や卒業式が中止されるなどの混乱が相次いだ。 トランプ氏はこれらのデモがユダヤ系への憎悪によるものだとし、大学側に参加学生の処分などを要求。7日には連邦予算から支出されているコロンビア大への助成金のうち400万ドル(約5億9千万円)を停止した。

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