尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する弾劾審判をめぐり、憲法裁判所に向けた与野党の圧力が強まっている。ソウル中央地裁の拘束取り消し決定と検察の即時抗告放棄で尹大統領が8日に釈放されて以降、その圧力はさらに激しくなった。 昨日、野党議員が憲法裁の迅速な決定を促す断食座り込みに入った中、民主党の朴弘培(パク・ホンベ)議員、金文洙(キム・ムンス)議員、全真淑(チョン・ジンスク)議員は断髪式を行った。全議員は「私の髪の毛でわらじを作って裁判官に送る」と述べた。「金曜日(14日)までに宣告しなければ今週末に大韓民国は賛否で完全にごった返す」(朴智元議員)というぞっとする発言も続いた。 与党議員も憲法裁の前で弾劾却下1人デモに入った。これに先立ち三一節(独立運動記念日)のソウル都心集会で国民の力の徐千浩(ソ・チョンホ)議員は憲法裁などを狙って「すべて叩きつぶさなければいけない」と脅迫した。集会では「不法弾劾裁判を主導した文炯培(ムン・ヒョンベ)、李美善(イ・ミソン)、鄭桂先(チョン・ゲソン)裁判官らを直ちに処断しよう」という金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官の獄中書信までも公開した。 12・3非常戒厳事態以降、経済・外交・安保が総体的危機を迎えた状況で国を安定させるべき政界がむしろ葛藤をあおっている。国民の力の議員らが呉東運(オ・ドンウン)高位公職者犯罪捜査処(公捜処)長を大統領不法逮捕などの容疑で最高検察庁に告発したのに対抗し、民主党をはじめとする野党5党は沈宇正(シム・ウジョン)検察総長を「内乱共犯」として職権乱用容疑で公捜処に告発した。国民年金や補正予算・相続税など緊急な懸案は後回しにして政争に没頭する与野党の姿に国民は絶望感を感じている。 このすべての破局の原因を提供した尹大統領は釈放されて官邸に戻ったが、国民和合の努力には背を向けている。釈放された時には支持者に拳を握ったポーズを見せ、頭を90度まで下げる姿は、国民全体の代表者でなく特定陣営の指導者という印象を植え付けた。釈放の直後に大統領室は「謙虚に憲法裁の宣告を待つ」と明らかにしたが、陽日に官邸で権寧世(クォン・ヨンセ)非常対策委員長、権性東(クォン・ソンドン)院内代表ら与党指導部と会うなど「官邸政治」を始める姿だ。公捜処長の告発など与党が強硬対応をするのは、尹大統領と熱烈支持層を意識しているのではという分析もある。 憲法裁は明日、崔載海(チェ・ジェヘ)監査院長と李昌洙(イ・チャンス)ソウル中央地検長に対する弾劾審判を宣告する。このため当初は今週中に出てくると予想された尹大統領の弾劾審判宣告が先に延びる公算が大きくなった。弾劾をめぐる賛否葛藤も当分続くことになった。国民統合は眼中にない政界の動きと相まって広場の混乱も危険レベルに達している。警察は尹大統領弾劾審判宣告当日は憲法裁から100メートル以内の区域を「真空状態にする」とまで明らかにした。政界は弾劾審判後の国民統合を考慮して自重しなければいけない。