トランプ米政権、「敵性外国人法」で南米不法移民の送還加速 大戦中の日系人収容にも利用

【ニューヨーク=本間英士】トランプ米大統領は15日、ベネズエラから不法入国した犯罪組織のメンバーを取り締まるため、1798年に制定された「敵性外国人法」を活用する布告を発表した。裁判所の手続きなどを経ずに敵対国の市民を拘束、送還することを可能にする戦時法で、第二次大戦中には当時のルーズベルト政権が日系米国人を強制収容した際に利用した。 ■人身売買や麻薬密輸の犯罪組織が対象 対象はベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」(アラグアの列車)のメンバーで、14歳以上の不法移民。当局が対象者を「敵性外国人」と判断すれば、即座に逮捕や強制送還などの措置を取ることができる。 ホワイトハウスによると、同組織は人身売買や麻薬密輸で知られ、数千人のメンバーの多くが米国に不法滞在しているという。不法移民の排除を掲げるトランプ氏は今年1月の2期目就任演説で、「米国に壊滅的な犯罪をもたらす全ての外国人ギャングを排除する」として、同法を発動すると宣言していた。 ■連邦地裁が強制送還差し止めの仮処分 一方、布告に先立ち、ワシントンの連邦地裁はベネズエラ移民の強制送還を差し止める仮処分を出した。人権団体が「戦時下ではない状況で同法を活用するのは違法」などと事前に訴えていた。 敵性外国人法は1798年、当時関係が悪化していたフランスとの戦争に備えて制定された。第二次大戦中の1942年には、日系米国人を敵視していた当時のルーズベルト政権が同法を発動。日系人約12万人が敵性外国人とみなされ、各地の強制収容所に送られた。 戦後は日系人の名誉回復を求める機運が高まり、レーガン政権下の88年に「市民の自由法」が成立。米政府として過ちを認めた上で謝罪した。

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