警察官をかたる特殊詐欺の犯人とみられる男とLINE(ライン)で通話やメッセージのやりとりをした徳島県内在住の70代男性が徳島新聞などの取材に応じた。途中で詐欺を疑い県警に相談したことで被害に遭わなかったものの、男がビデオ通話で示した偽の警察手帳や画像で送信した逮捕状などは「素人には偽物かどうか見破れない」と手口の巧妙さを指摘した。 男性によると、1月31日午前10時ごろ、県内の事務所で作業中にスマートフォンからライン電話の着信音が鳴った。相手は徳島県警を名乗り、青森県警をかたる男に切り替わった。 男は「昨年10月に青森県のドコモショップにあなたの携帯の登録があり、あなた名義の携帯電話が1億5千万円の詐欺に使われている。逮捕した犯人の1人が1割を報酬としてあなたに渡したと言っている。返さなければ逮捕する。守秘義務があるので誰にも言わないように」などと説明した。 「信じてもらうため」とビデオ通話に切り替え、背広を着た30代ぐらいの男が警察手帳を提示。背後では警察無線のような音も聞こえた。事務所に誰も入れるなとの指示があり、2時間ほど男と話した。 通話後に男のアカウントから「守秘義務命令」という架空の書類の画像が届いた。男性の氏名や住所の記載があり、通話時に聞き出したとみられる。その後は主にメッセージでのやりとりが続いた。 男は男性に1日4回の定時連絡を求め、2月4日には偽の逮捕状と起訴状の画像も送信。公的な文書を思わせる体裁で「青森県警」や「東京地方裁判所」の文字や公印があった。 男性は「通帳の写真を見せてほしい」と求められたことなどから次第に不審に感じるようになり、2月7日に知人がいる徳島県警に相談した。この間、犯人側から「現金を指定口座に振り込め」のように金銭が絡む指示はなかった。 県警は「オレオレ詐欺とみられ、時間をかけて信用させてから『逮捕状を取り下げるため』といった名目で金銭を要求する手口が考えられる」と指摘。「警察官がラインのビデオ通話などで警察手帳や逮捕状を示すことはない」と、注意するよう呼びかけている。 男性は「青森に行ったこともなく心当たりはなかったが、最初は相手が警察だと信じ、動画も芝居とは思えなかった。おかしいと思ったらすぐに相談した方がいい。悩んでも何も解決しない」と語った。