アメリカとロシアは10日、収監者の身柄交換を行った。ロシアからは、ウクライナ側に寄付したことで有罪となったロシア系アメリカ人が解放された。 米ロサンゼルスで暮らしていたアマチュアバレリーナ、クセーニャ・カレリナ氏は、2024年初めにロシア西部エカテリンブルク市の家族を訪問中に逮捕され、1年以上、ロシアの刑務所に収容されていた。 ロシア連邦保安庁(FSB)は、ウクライナ軍に武器を提供する組織のために資金を集めたとしてカレリナ氏を訴追。同氏は昨年8月に罪を認め、禁錮12年を宣告された。 ロシアの人権活動家によると、カレリナ氏は2022年2月、ロシアがウクライナを全面侵攻した初日に、51ドル(現在の相場で約7300円)を1回送金したという。同氏は当時、アメリカに住んでいたという。 送金先の慈善団体は、武器や弾薬の資金を集めているという指摘を否定し、人道支援と災害救援に専念していると述べた。 FSBは、カレリナ氏の携帯電話からこの送金記録を発見したと考えられている。 アメリカはカレリナ氏の解放と引き換えに、2023年にキプロスで逮捕されたドイツとロシアの二重国籍を持つアルトゥル・ペトロフ氏を解放した。ペトロフ氏は、ロシア軍と協力するメーカーに、超小型電子部品を違法に輸出したとして訴追されていた。 ロシアのタス通信は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がカレリナ氏の恩赦を決めたと報じている。 身柄交換は10日早朝、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで行われた。 ドナルド・トランプ米大統領はこの日、テレビ放映された閣議の中で、カレリナ氏の解放は総合格闘技団体「アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)」のダナ・ホワイト最高経営責任者(CEO)からの要請だったと明らかにした。 「ダナ・ホワイトが私に電話をかけてきて、UFCの選手の友人か関係者だと言った。ダナは素晴らしい人物で、プーチン大統領と話し合い、取引が成立した」と、トランプ大統領は述べた。 マルコ・ルビオ米国務長官は、カレリナ氏が「アメリカへの帰国便に乗っている」と認めた。 また、カレリナ氏が「ロシアによって1年以上、不当に拘束されていた」と付け加え、「トランプ大統領がカレリナ氏の解放を確保した。大統領はすべてのアメリカ人の解放に向けて引き続き努力する」と述べた。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、交換の場には、米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官が立ち会ったという。 カレリナ氏の両親は、トランプ氏とプーチン氏に感謝の意を表した。 父親のパヴェル氏はWSJに、「取引には両者が関与していたに違いない」、「私たちは喜びで我を忘れている」と語った。 「最初の数秒間の会話は純粋な感情だけで、何を話していたか覚えていない。まるで喜びの爆発のようだった」 米ロ間の身柄交換は、この2カ月で2回目。2月には、マネーロンダリング(資金洗浄)の罪でアメリカの刑務所に服役していたロシア人のアレクサンドル・ヴィニク氏と、アメリカ人教師のマーク・フォーゲル氏の身柄が交換された。 この身柄交換は、両政府が関係改善を図る中で行われた。 10日にはイスタンブールで両国の当局者が会談し、ロシアのウクライナ侵攻後に縮小された大使館業務の一部復旧に向けて新たな交渉を行った。 (英語記事 Woman jailed over $51 donation to Ukraine freed in US-Russia prisoner swap)