韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が自然人として初めて内乱裁判の被告人席に立つ。ソウル中央地方法院(地裁)刑事第25部(部長判事チ・グィヨン)は14日午前10時、尹前大統領の内乱首謀容疑事件の初公判期日を開く。 昨年12月3日のいわゆる12・3非常戒厳宣言および準備過程が刑法第87条が定めた内乱罪の首謀者にあたるとして起訴された事件だ。公判期日には被告人が出席しなければならない。11日に官邸を出て瑞草洞(ソチョドン)の私邸に引越しした尹氏はここで警護人員の力を借りて法廷に出席する予定だ。警護上、必要に応じて地下駐車場を通した入場許可も裁判所からあらかじめ取っておいたことから、外部の露出を極力抑えた地下通路からの入場になる可能性が高い。 尹氏の出廷は今回が初めてではない。2月20日被告人出席の義務がない公判準備期日に、拘束取消審問に応じるために中央地方法院に出廷したことがある。1月18日拘束前の被疑者審問が開かれた西部地方法院にも出廷していた。ただし当時は現職大統領という身分であり、「自然人・尹錫悦」として被告人席に座るのは14日が初めてだ。 過去、朴槿恵(パク・クネ)元大統領、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の刑事裁判当時には、初公判期日の一部法廷内の撮影が許可されていたが、今回は撮影が不許可になった。1月から計8回憲法裁判所大審判廷に出席して弾劾審判を受ける「被請求人・尹錫悦」の姿は画面に残ったが、刑事法廷に座った「被告人・尹錫悦」の姿は一般に公開されなくなった。中央地方法院は撮影不許可の理由について別途明らかにはしていない。 大法院規則のうち「法廷の傍聴および撮影などに関する規則」は「裁判長は被告人(または法廷に出席する原告、被告)の同意がある場合に限って撮影申請に対して許可ができる」と定めていて、「撮影など許可が公共の利益に相当すると認められる場合」には被告人が同意したかどうかとは関係がなく決められるように定めている。2017年朴氏の初裁判時は「事件の歴史的意味と国民の知る権利」を理由に、2018年李氏の初裁判も「社会的関心度および国民の知る権利」を理由に撮影が許可された。李氏は本人が撮影に同意しない意思を明らかにしたが、裁判部の職権で法廷撮影を許可した。公判期日の法廷撮影を許可する場合も、公判が始まる前の短時間に限定され、裁判過程を撮影することはできない。 初公判期日では検事が公訴事実を朗読した後に尹氏側の反対意見が続く。憲法裁判所の弾劾審判に参加した弁護士のうち16人が選任契(弁護士を選任して法定人権利を委任するための契約書)を出して参加した尹氏側は、国会封鎖計画・指示、主要人物の逮捕・拘禁指示、国会議決の阻止、非常立法機構創設など公訴事実をすべて否定する立場だ。準備期日に意見書などで明らかにしたものと同じく、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に捜査権がないため適法手続き違反であり、正当な国家緊急権の行使なので内乱罪にはあたらないとの主張も続けるものとみられる。現在は尹氏・軍関係者・警察関係者など事件を三通りに分けて進めているが、今後審理が進められて争点がまとまってくれば併合する可能性も残っている。 裁判部は今後週1回公判を進めるが「午前10時~午後6時」の終日裁判を予告した状態だ。必要な場合、午後6時を越える場合もあるとしている。裁判部は準備期日にひとまず証人審問を進めながら、同時に証拠の整理も進めるという裁判進行計画を明らかにした。これにより、初公判期日には検察側から崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相と趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官を証人として召喚する計画だったが、日程上、チョ・ソンヒョン陸軍首都防衛司令部第1警備団長とキム・ヒョンギ特殊戦司令部第1特戦大隊長を先に呼んで証人訊問を行う予定だ。