特殊詐欺被害、石川最悪ペース 1~3月で4億6500万円 昨年1年の1.5倍 警官偽る手口8割超

●県警まとめ 石川県内で今年確認された特殊詐欺による被害が、過去最悪のペースで推移している。県警が16日までにまとめた1〜3月末の被害総額は約4億6500万円となり、わずか3カ月で昨年1年間の被害額(約3億2千万円)の約1・5倍、これまでで最も多い2015年の約5億円に迫っている。警察官をかたるケースが全体の8割超を占め、偽の警察手帳を見せたり、末尾が「0110」の電話番号を不正に表示させたりするなど、手口は巧妙化しており、県警は警戒を呼び掛けている。 県警が今年1〜3月に確認した特殊詐欺は前年同期比30件増の44件で、4月に入ってからも被害は相次いでいる。 県内の特殊詐欺の年間被害額は、15年に最多の約4億9200万円となった。その後、警察は摘発を強化、被害抑止策が周知されてきたこともあり、一時は減少傾向にあったが、近年、増加に転じている。 今年の特殊詐欺被害の内訳は「オレオレ詐欺」による被害が21件約4億1千万円、「架空料金請求詐欺」が16件約4800万円、「還付金詐欺」が4件約530万円などとなっている。 オレオレ詐欺のうち、警察官を名乗って「詐欺事件の容疑者になっている」「あなたの口座が犯罪に使われている」などと電話を掛け、不安をあおる手口は19件約4億600万円に上った。 固定電話や携帯電話に連絡した後に、SNS(交流サイト)のビデオ通話に誘導し、警察官役が偽の警察手帳を示して信じ込ませるパターンが目立つという。県警が2月に公表した、県内の60代女性が3億円をだまし取られた事件でも、電話口に県外の警察官をかたる男が登場した。 ●電話番号「0110」表示被害8件 県警本部や警察署の電話番号に使われている末尾が「0110」の番号を不正に表示させる手法も増えている。警察官をかたる詐欺19件のうち、8件の被害者には末尾「0110」の番号で電話が掛かってきたという。 県警組織犯罪対策課の担当者は「警察官が電話で『逮捕します』と告げることは絶対にない。SNSでやりとりすることもない。詐欺と疑って、必ず相談してほしい」と強調した。 ●「一人で抱えず相談を」 東京未来大・出口保行教授 (犯罪心理学) ●信頼する権威悪用 不安あおり「実態は恐喝」 警察官をかたる詐欺被害が相次ぐ現状について、東京未来大の出口保行教授(犯罪心理学)は「多くの日本人が信頼する権威的な組織を名乗ることで、無視または、第三者に相談しにくくさせている」と指摘する。 これらの詐欺は「劇場型」と呼ばれ、公的機関を名乗る者が代わる代わる登場する。その中に警察官がいることで、被害者の不安をあおり「なんとか解決しなければ」との思いを抱かせると強調。「実態は恐喝。解決しないと、とんでもないことになるという脅しだ」と述べた。 一方で、被害は第三者に話すことによって防ぐことができるとし、手口と、一人で抱え込まないことを繰り返し広報することが重要だとした。

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