Netflixが日本に上陸して、今年で10年。社会現象化した「サンクチュアリ-聖域-」「極悪女王」など数々のオリジナル作品を送り出し、コンテンツメーカーとして確固たる地位を築きつつある。近年、テレビマンたちが続々とNetflixへ移籍しているのも、その証左だろう。ドラマ「モテキ」「エルピス―希望、あるいは災い―」などの代表作をもつ映像ディレクターの大根仁さんは、Netflixで大ヒット作「地面師たち」の監督・脚本を手がけたことを機に、昨年9月に同社と5年間の独占契約を結んだ。作り手視点から見たNetflixの魅力について、大根さんに聞いた。 * * * ――ドラマ「地面師たち」は、昨年7月に公開されると3カ月で1050万ビューを記録し、世界的ヒットになりました。長年携わってきたテレビドラマや映画ではなく、Netflixでドラマを作ろうと思ったのはなぜですか? 単純に、ほかから仕事が来なかったからです(笑)。 2022年に放送されたドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(関西テレビ制作、フジテレビ系)で監督を務めたんですけど、視聴率はそこまで伸びなかった一方で、配信で人気が出て。その年、最も優れたテレビ番組におくられる「ギャラクシー賞」大賞をいただきました。 これで当分はテレビドラマのオファーが来るだろうなと思っていたら、一本も来なくて……。エルピスほどのクオリティーは、テレビでは要らないということでしょうね。今のテレビ業界では、“タイパ”と“コスパ”よく作れるライトな作品が求められているんだなと。 同時期に「地面師たち」の企画開発をしていて、配信メディアに目をつけました。「全裸監督」をはじめ質の高いオリジナル作品を生み出しているNetflixに「地面師たち」の企画と脚本を持ち込んだ。すると、「これはウチ向きですね」と話が進んでいったんです。 業界内では、「Netflixに企画を出しても100本に1本通るかどうか」と言われているのに、うまく気が合って、1発目で通ったのは本当に運が良かった。それまではテレビや映画という日本人としか付き合ってこなかったけど、初めてハーフの彼女ができたような感じです(笑)。