マスク着用は犯罪に──米国で進む着用禁止の動き

近年、特に新型コロナウイルスのパンデミックを通じて、感染拡大の予防などマスクの重要性が広く認識されるようになった。しかし米国では今、多くの自治体でマスク着用を犯罪行為とする法律の制定が検討されている。その背景には、大学をはじめとする公共の場での「暴動」──学生デモなどの頻発がある。 ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)が推し進めているのは、マスクを着用して他者の安全を脅かす行為を刑事罰の対象とする法案だ。健康上や業務上、また天候などの理由がある場合は例外とされる。テキサス州の上院議員もマスク着用を禁止し、嫌がらせや脅迫、威嚇などにマスクを使用した者を罰する法案を提出。ノースカロライナ州やニューヨーク州ナッソー郡など他の多くの自治体も、同様の理由ですでにマスク着用を禁止している。 もちろん公共の安全を守ることは重要だが、法律でマスク着用を禁止することは公衆衛生上のリスクとなる可能性がある。マスクは万能ではないものの、さまざな科学的データにより、呼吸器感染症の感染および蔓延を抑制する効果が証明されている。マスク着用の目的は、会話や咳、くしゃみなどで吐き出される感染性粒子をブロックすることだ。それゆえパンデミック中はマスクの着用が推奨、あるいは義務付けられた。 マスクには大気汚染による有害な化学物質や粒子状物質(灰、すすなど)の吸入を防ぐ役割もある。そのため、とりわけ山火事など煤煙被害が深刻な場合の着用が推奨される。山火事で放出される粒子状物質や刺激物質は肺の中にとどまり、喘息や閉塞性肺疾患などの慢性疾患を引き起こす可能性があるが、マスクをつけることで有害な微粒子の多くをブロックできる。 重ねて言うが、感染症の拡大を防ぐ手段としてのマスクの有効性は多くの研究結果によって裏付けられている。研究室での実験と、医療現場での検証の両面において、ウイルスを含む感染性粒子の伝播を抑制する効果が示されている。CDC(米国疾病対策センター)の見解は以下の通りだ。 • 感染者がマスクを着用することで、ウイルスの飛散を低減できる • 非感染者はマスクを着用することで、空気中の感染性粒子を吸い込むリスクを低減できる

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