チョコザップで相次ぐ置き引き 「ジム活」で狙われた鍵のない荷物棚

24時間営業の「chocoZAP(チョコザップ)」などの無人ジムで、置き引きの窃盗事件が相次いでいる。大阪と京都ではかばんや現金を盗んだとして、3人が逮捕された。近年店舗を広げている無人ジム。事件はその利用のしやすさが逆手に取られた形で、防犯上の課題が浮かび上がる。 チョコザップを運営する「RIZAP(ライザップ)」(東京都新宿区)は取材に対し、「安心安全に利用ができる環境作りに努めていく」としている。 先月15日、30代の女性が大阪市中央区のチョコザップを利用したときのことだ。仕事帰りに立ち寄り、財布やスマホが入ったかばんを荷物置きの棚に置いた。しかし、しばらくすると、かばんは棚から消え、店外に投げ捨てられていた。財布にあった現金約6万7千円は抜かれていたという。 大阪府警は今月7日、女性のかばんを盗んだとして、府内の無職の少年(18)を窃盗容疑で逮捕した。少年は「30件ほどやった」と供述し、「サラリーマンなどお金を持っている人が利用しているから(ジムを)選んだ」と話しているという。府内では今年に入り、チョコザップで同様の被害が約70件確認されているという。 京都府警も、無人ジムの店舗内で現金や衣服を盗んだとして、京都市の少年2人を逮捕・送検し、8日に発表した。少年らはジムを狙うことを「ジム活」と呼んでいたといい、府警は京都、東京、奈良の3都府県で盗みを繰り返していたことを裏付けたという。 ■「貴重品の管理は自己責任となります」 大阪などで被害があったチョコザップは「コンビニジム」をうたい、利用のしやすさを売りにしている。 ライザップのオフィシャルサイトによると、チョコザップは2022年7月にサービスを開始。当初100店舗あまりだったが、今年2月時点で全国約1800店舗まで広がった。会員数は133万人に上る。 月額2980円(税抜)という低価格が特徴で、店舗内をAIカメラで監視し、無人営業にすることで人件費などのコストを抑えているという。 大阪と京都の事件で共通するのが、施錠設備のない荷物棚から盗まれたことだ。 大阪市内のチョコザップに週3回ほど通う男性会社員(38)は「棚に鍵がなく、以前からこわいと思っていた」。事件を知り、「鍵のロッカーをもうけるなどの対策をしてほしい」と訴える。 ただ、ライザップは朝日新聞の取材に「無人営業のため、鍵付きのロッカーは故障や鍵の紛失時にすぐに対応ができない」と回答した。多くの防犯カメラが設置され、貴重品の管理については店内の掲示物などで注意喚起していると説明する。 大阪府警の捜査幹部も「安く、気軽に行けるのがコンセプトのジムで、コストをかけた対策との両立は難しいのではないか」との見方だ。 入店時の利便性も悪用された。 チョコザップではスマホ上でクレジットカード情報などを登録するだけで会員登録ができる。発行された入館用のQRコードを店舗入り口にかざし、入店する仕組みだ。 京都府警の捜査で、逮捕した少年は無人ジムに偽名で会員登録してQRコードを入手し、それを2人で使い回すなどして侵入を繰り返していた疑いがあることがわかったという。 事件を受け、大阪府警と京都府警は、無人ジムの運営側に防犯上のセキュリティー対策などの協力を依頼。大阪府警は、貴重品は目の届くところに置くなど、利用者に対しても防犯意識を高めてほしいと呼びかける。 ライザップの担当者は「事件については非常に遺憾。警察と密接に連携し、専門的なアドバイスに基づき、防犯対策を講じていく」としている。(宮坂知樹、岡田真実、佐藤道隆)

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