PKK解散決定 40年超の武装闘争に幕 情勢激変、エルドアン氏「政治的延命」に利用か

【カイロ=佐藤貴生】トルコからの分離独立を求めて反政府武装闘争を展開した少数民族クルド人の非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」が12日、解散して闘争を終結すると発表した。40年以上に及ぶ闘争に終止符を打つ歴史的な動きで、PKKを取り巻く環境が大きく変化したことを示している。一方、エルドアン大統領は成果を誇示して自らの政治的延命に利用するとの観測もある。 ロイター通信によると、PKKは5月上旬、イラク北部で開いた大会で解散と武装闘争の即時停止を決めた。解散は2月、トルコ最大都市イスタンブール沖の島に収監された創設者、アブドラ・オジャラン受刑者がすでに求めていた。 PKK当局者は、武装解除の進展はクルド人の人権保護やPKKメンバーの処遇を巡るトルコ政府の取り組み次第だという見方を示した。このため、武装解除が円滑に進むかは不透明な部分もある。 PKKは1978年の結成当初、発展から切り離された農村などの青年で構成されたといわれる。80年代から政府の軍事施設や警察署などを標的にテロを行い、約4万人が死亡した。欧米はテロ組織に指定している。ただ、PKKは近年、分離独立ではなくクルド人の人権擁護などに要求のレベルを下げていた。 クルド人民兵組織はシリア北東部にも存在するが、昨年末のアサド政権崩壊で情勢は一変。クルド人組織と連携してきた米軍は先月中旬、シリアの駐留規模を約1千人に半減する方針を示した。周辺国も含め、クルド人の今後の動向は予測困難だ。 PKKの解散決定を受け、トルコ大統領府は12日、「テロのない国」に向けて事を進める方針を示した。トルコの内政、経済が安定に向かうと指摘する向きもある。 ただ、トルコの男性ジャーナリスト(58)は産経新聞の取材に対し、「クルド人の知事らは選挙で当選して就任したのに、『PKKと関係がある』などとして投獄された。他のクルド人政治家や民間人も同様の非難を受けている」とし、「クルド人の人権保護が実現するかは不透明だ」という見方を示した。 3月にはエルドアン氏の最大の政敵であるイスタンブールのイマモール市長が汚職容疑で逮捕され、次期大統領選をにらんだ政権側の差し金ではないか、との疑念から大規模な反政府デモが起きた。

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