闇バイトに応募し、強盗やひどい場合には強盗殺人にも手を出す若者たちが世間を脅かしている。 2024年8月から11月にかけては、首都圏で闇バイトを実行役とする強盗事件が十数件も発生した。 彼らが指定の集合場所に出向くと、応募仲間もいて、つかの間、安心感や仲間内の功名心も働くはず。また、募集側に自分の名前や住所、電話番号、時には借金額、勤務先や親元、家族まで知られている恐怖心などが事件のはずみ次第で極刑間違いなしの殺人へと踏み切らせるのだろう。 彼らを「愚か」「社会常識に欠けすぎた奴ら」と切り捨てることは簡単である。だが、彼らは憎むべき加害者である反面、闇バイトで募集する者の多くは匿名・流動型犯罪グループ(匿流、半グレ)であり、匿流の犠牲者ともいえる。応募者は匿流にとって「切り捨て要員」であり、決して仲間内の人間ではない。闇バイトによる凶悪犯罪の元凶が匿流であることを忘れてはなるまい。 匿流が犯す犯罪の形は日ごとに変化している。 その犯罪の源流は2000年代初期に始まる「オレオレ詐欺」とみられるが、匿流が当初から保持してきたモットーは「ともかくカネにする」「絶対逮捕されない(前科者にならない)」「匿名のまま押し通す」だったと総括できる。 これまで匿流が手を染めてきた主な犯罪としては特殊詐欺のほか、10年頃にあった「イラク通貨を購入すれば必ず儲かる」などと持ちかけて高額の契約料を取るイラクの通貨ディナールの持ち込み詐欺や、危険ドラッグ、金地金(インゴット)の無税密輸入、暗号資産(仮想通貨)などがある。いずれも匿流が最初に始めたことであり、ロートル化した暴力団に比べ、彼らには新しい資金源である「シノギ」を創建する力があるといっていい。 オレオレ詐欺にしても初期の頃にはホームレスらから住所と名前を借りて銀行口座を開設し、それを受け口座にしてターゲットを騙し、ATMで被害額を振り込ませていた。その後、金融機関がATMでの携帯電話の使用を原則禁止した。さらに大阪府では25年3月、65歳以上の高齢者がATM操作中に携帯電話で通話することを禁止する条例を制定するなど、規制が強まり、現金や電子マネーでの授受(ここで「受け子」役が発生)に変更された。 欺しに使うツールも当初の他人や架空の名義で契約された「トバシ」とよばれる携帯からインターネット回線を利用したIP電話に変化し、現在では発信元を警察署の代表番号にすり替えるほど大胆に変身している。