『キャスター』阿部寛が追求するジャーナリスト像とは? 利害と感情の先にある“正義”

〈騙し愛の嘘の中で/信じられる物を探す/瞳が欲しい〉 『キャスター』(TBS系)第7話は、tuki.が歌う主題歌「騙シ愛」の歌詞のように、だまし合いと嘘の応酬のさなかに信じられるものを探す放送回となった(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。 藤井親子を病院で待つ進藤(阿部寛)にNPO法人「ひまわりネット」代表の深沢(新納慎也)が接触してくる。深沢は逮捕を逃れるため、進藤の娘すみれ(堀越麗禾)の安全と引き換えに交渉を迫った。進藤は提案を受け入れ、真弓(中村アン)だけが逮捕。裏をかかれた華(永野芽郁)は番組で、脅しに屈して娘の命を守るのはずるいと糾弾するが、進藤は平然と自身は間違っていないと主張した。深沢の電話を仲介したのは、華の父親で医師の川島圭介(山中崇)だった。川島は深沢と組んで違法な臓器移植を行っていた。川島と接触した進藤は、ある計画を持ちかける。 18年前に姉の沙羅(鈴木礼彩)を亡くした華と、海外での違法な臓器移植をスクープした進藤。第6話に続く第7話は二人の因縁がクローズアップされる形となったが、若い華を煙に巻くような進藤の立ち回りに終始ほんろうされた印象がある。命を救うか、法律を守るかという対立軸に、進藤の場合はさらにスクープ至上主義とでも言えるようなジャーナリストとしてのあり方が加わるため、何がやりたいかが見えにくい。しかし、彼が言うことではなく、やることを見ていくと、首尾一貫したものがあることがわかる。 華から責められた進藤だが、深沢をかばったわけではなかった。詳細は本編に譲るが、裏では警察の捜査に協力していた。一見するとスタンドプレーに見える進藤は、実のところルールを重んじるチームプレイヤーで、独自の人心掌握術でADの本橋(道枝駿佑)や編集の尾野(木村達成)を抱き込むが、仕事を通して報道の心構えや取材のノウハウを教えているふしもある。情に訴えるだけのゴリ押しではなく、ちゃんと見返りを与えるので相手も協力しやすい。同僚の暴走を受け止めるだけの度量もある。

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