2025年5月9日より全国公開された『パディントン 消えた黄金郷の秘密』。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。 【ストーリー】 ロンドンで平和に暮らすパディントン(声:ベン・ウィショー)とブラウン一家。時が経ち、彼らにも変化があった。 パディントンはパスポートを取得して正式なイギリス国民に、長女のジュディ(マデリン・ハリス)は大学を目指して猛勉強中、ブラウン夫人(エミリー・モーティマー)はもうすぐ娘が巣立つ寂しさに耐え、長男のジョナサン(サミュエル・ジョスリン)は自分の部屋にこもりきり、ブラウンさん(ヒュー・ボネヴィル)は保険会社で大忙し、時間ができたバードさん(ジュリー・ウォルターズ)は自由を満喫で、ブラウン一家は一緒に過ごす時間がほとんどなくなっていた。 そんな中、パディントンのもとに故郷のペルーから1通の手紙が届く。差出人は、老グマホームの院長クラリッサ(オリヴィア・コールマン)だった。 手紙には、パディントンの育ての親のルーシーおばさんが、パディントンに会えないのが寂しくて元気をなくしていると書かれていた。 すると、ブラウン夫人が家族旅行を兼ねて皆でペルーに行きましょうとパディントンに提案。「老グマホーム」で暮らすルーシーおばさんに会いに行くために、パディントンはブラウン一家とペルーへ家族旅行に出る。 ところがパディントンたちが「老グマホーム」に到着すると、おばさんは眼鏡と腕輪を残して失踪していた。おばさんが残した地図を手掛かりに、パディントンたちはインカの黄金郷があるというジャングルの奥地へとルーシーおばさんを探す冒険の旅に出るが…。 ■大人気シリーズ『パディントン』待望の新作はペルーを舞台にした冒険活劇! 40カ国語で翻訳され、全世界3500万部以上の売り上げを誇るロングセラー児童小説『パディントン』シリーズを実写映画化した1作目の『パディントン』(2016年)。続編の『パディントン2』(2018年)の2作を合わせた全世界での興行収入は、なんと約900億円!「見た目はクマだけど、中身はとっても紳士」というギャップ萌えのユニークなキャラクターと、モフモフのかわいすぎるルックスで、日本でも“パディントン旋風”を巻き起こし大ヒットを記録した。 シリーズ前2作を手がけたポール・キング監督は本作の制作総指揮と脚本を務め、ミュージック・ビデオやコマーシャルを手掛け、本作が長編映画監督デビューとなるドゥーガル・ウィルソンが監督を務めた。 筆者はポール・キング監督の『パディントン』前2作、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年)が大好きなこともあり、できれば3作目も彼に監督を務めてもらいたかった気持ちはあるものの、いざ本作を鑑賞してみたらいつものパディントンの世界観がスクリーンに広がっていたのでホッとした……というか、パディントンがとにかくかわいいので、監督が変わろうと舞台がペルーになろうとまったく問題なかったのだ。 シリーズ前2作に続いてパディントンの声を担当するのは、『007』シリーズのQ役で知られるベン・ウィショー。彼の優しくて温かみのある声はパディントンにピッタリで、ベン・ウィショー本人もかわいらしい人(特にQ役を演じている時)なので、“パディントンの中の人”も含めて癒やしの存在である。 ブラウンさん役を「ダウントン・アビー」シリーズのヒュー・ボネヴィル、娘のジュディ役をマデリン・ハリス、息子のジョナサン役をサミュエル・ジョスリン、ブラウン家に同居する親戚のバードさん役をジュリー・ウォルターズが続投していて、ブラウン夫人役はサリー・ホーキンスに代わって『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)、『シャッター アイランド』(2010年)のエミリー・モーティマーが演じている。 1作目の『パディントン』は、ペルーのジャングルの奥地からはるばるイギリスのロンドンへやってきたパディントンがブラウン一家と出会い、都会で暮らし始める物語を描いていた。そして続編『パディントン2』では、警察の手違いで絵本泥棒として逮捕されてしまったパディントンと、パディントンを救おうとするブラウン一家のドタバタ劇が描かれた。 そして3作目となる本作では、自分を大事に育ててくれたルーシーおばさんのために、パディントンとブラウン一家がパディントンの生まれ故郷である南米ペルーで奮闘する姿が描かれる。 ■ベテラン俳優アントニオ・バンデラスとオスカー女優オリヴィア・コールマンの振り切った演技に注目! 物語の前半、ルーシーおばさんを捜索するために川を上るボートが必要となったパディントンたちは、ちょうど停留していたボートを見つける。その船はペルーの観光ボートで、船長のハンター・カボットに貸し切りをお願いすることに。 イケオジでユーモアに溢れて魅力的だが、どこか怪しい雰囲気を放つハンター・カボットを演じたのは、ペドロ・アルモドバル監督の『ペイン・アンド・グローリー』(2019年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされたアントニオ・バンデラス。 『マスク・オブ・ゾロ』(1998年)や『私が、生きる肌』(2011年)など幅広い作品に出演している彼は、本作でハンターとハンターの先祖(スペインのコンキスタドール、伝道者、エドワード王朝時代の探検家、探鉱者、スウェーデン人の女性パイロット)の6役に挑んだ。 カルラ・トウス演じる娘のジーナとハンターとの複雑な親子関係も丁寧に描かれているので、親と子どもそれぞれの視点で観ても共感できるシーンが満載。アントニオの演技力にも引き込まれること間違いなし! 入居者に明るく親切な態度で接する老グマホーム院長クラリッサ役を演じたのは、ヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』(2018年)でアカデミー主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマン。 オリヴィアは、ポール・キング監督の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でもコミカルな演技で楽しませてくれたが、本作ではギターと歌が得意で頼れるリーダーのクラリッサをチャーミングに演じている。 ■珍道中を繰り広げながらルーシーおばさんを探すパディントンたちの姿に涙すること間違いなし! 本作の見どころといえば、ジャングルの奥地へと進んだパディントン一行が、トラブルに見舞われながらも必死でルーシーおばさんを探そうとする場面の数々だ。インディ・ジョーンズに登場するような遺跡で大きな岩が転がってきたり、毒蜘蛛に襲われそうになったり、パディントンにいくつもの危機が迫る。 だが、パディントンはいつもポジティブでへこたれず、わりとマイペースに問題を解決していく。今回も“にらみの目(礼儀や大事なものを忘れた人に向けるパディントンの必殺技)”を使うシーンがあり、“この技を使う時のパディントン大好き”と心の中でつぶやきながら楽しく鑑賞することができた。 物語終盤では、ルーシーおばさんを大切に思うパディントンの姿や、ブラウン一家とパディントンの絆が感じられて気づけば目から涙が…。さらにラストにはうれしいサプライズもあり、最高の気分でエンドロールまで堪能した。 パディントンたちのハラハラドキドキの大冒険を、ぜひ劇場で体感してもらいたい。 文=奥村百恵 (C) 2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved. ※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。