警察官を装う詐欺師から逮捕状を見せられて、果たして冷静に詐欺だと見破ることができるだろうか。大阪府警特殊詐欺捜査課が先月12日に発表した約2億7千万円がだまし取られた特殊詐欺被害では、偽の令状の存在が被害を生んだ。 府警によると、被害に遭った府内の80代女性は4月下旬、兵庫県警の捜査員などを名乗る男らから「特殊詐欺事件の振込先にあなたの口座が使われ、逮捕状が出ている」と連絡を受けた。男らはSNS(交流サイト)を通じて逮捕状と実際には存在しない「機密保持約定書」の画像を送り、「誰かに相談したら罰則がある」と警告。女性は周囲に相談できぬまま金融機関の貸金庫に保管していた金品を引き出し、何者かにだまし取られたという。 犯行に用いられた偽の逮捕状が報道陣に公開されたが正直、見抜ける自信はない。捜査関係者も「そもそも本物の令状を見たことがない人も多く偽物と判別することは難しい」と話す。 ただ、詐欺だと見抜くポイントも存在する。実際の警察はSNSで令状の画像を送ることはなく、口座を指定して現金を送金させることもない。 特殊詐欺は対策が練られるたびに別の手口に転じる。以前に流行した手口も記憶が薄れたころに再び行われると、だまされてしまうのも不思議ではない。 とはいえ、コツコツと積み重ねてきた資産を巻き上げられるのは非常に腹立たしい。詐欺の撲滅のためには捜査当局の摘発だけでなくわれわれの犯罪手法に対する知識の向上も必須だ。(鈴木文也)