「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。 * * * 6月2日に、J-WAVEの番組「JAM THE PLANET」でお話する機会をいただきました。5月に開催された「超党派医療的ケア児支援議員連盟」(医ケア議連)での私の発表をご覧になって連絡をくださったとのこと。医療的ケア児への世の中の関心や支援が確実に進んでいますね。本当に嬉しいことです。今回はこのラジオ出演について書いてみようと思います。 ■障害は誰にでも起こり得る 当日。指定された時間に六本木ヒルズに向かいました。スタジオは六本木ヒルズの33階で、目の前に東京タワーが見えるとても素敵な場所でした。出演40分前に最終の打ち合わせをするためにスタジオ横の会議室に入ると、スタッフから医療的ケア児を取り巻く環境についての質問を受けました。内容は我が家の長女の普段の生活から医療的ケア児支援法の改正まで多岐に渡り、答えているうちに自然に緊張がとけて「話すモード」になり、スムーズに本番につながったように思います。この時間もとても有意義でした。 実は、事前に放送作家さんから番組の流れや私が答える質問をいただいていました。たとえば、「(私が)この番組に出ている間、長女は誰がケアをしているのか?」や、「18歳の壁についての解説」や、「今後、医療的ケア児支援法の改正があるとしたらどんな改善が必要か?」や「医療的ケア児を見たことがなく、自分ごとと捉えることが難しい方へのメッセージ」などです。 この日は訪問看護師さんに長女の夜の薬の注入をお願いしたこと、夫か私の帰宅が早い方が長女をお風呂に入れること、18歳の壁については、年齢で区切らない包括的なしくみが必要だと思うこと、そして最後に「障害は誰にでも起こり得ること」をお話する流れでいましたが、番組ナビゲーターの吉田まゆさんのテンポの良い進行により話が弾み、まったく予定になかったインクルーシブ教育や、ひざ下が不自由な息子の生活のことなどもお話しました。放送作家さんは、私にお声かけくださる前にこのコラムを読んでくださったとのことで、ざっくりとその内容を吉田さんに伝えていたそうです。そのため、インクルーシブ教育に関する話題につながったようでした。 ■インクルーシブ教育に向けた課題 この日の話の中で特に印象に残っていることが2つあります。まずは台本になかったインクルーシブ教育に関することです。私はインクルーシブ教育には大賛成で、元々は就学支援をするために資格を取得して仕事を始めました。でも、今の日本はアメリカに比べるとフルインクルージョンを実現するには教職員の体制が未完成です。 一方で、日本の特別支援教育は自立に向けたサポート内容が素晴らしいのですが、現状は通常学級に在籍する障害のある子どもたちはこの支援は受けることができません。特別支援教育の良さを残しつつインクルーシブ教育を広げていくためには、専門知識を持った教員やスクールソーシャルワーカー(SSW)など、アメリカでは当然のように配置されている職種と人数を確保することが求められます。本来は医療的ケア児がメインテーマでしたが、この話題はとても熱く語ってしまいました(笑)。