大川原化工機、笑顔なき会見 「廃棄の前例」第三者委の捜査検証要求

「やっと終わった」。真実を追求するため、東京都と国を訴えてから1372日。無実の罪を着せられた化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の長い闘いが幕を閉じた。ただ、11日の記者会見で社長らに笑顔はなかった。「事件の捏造(ねつぞう)はなぜ起きたのか」。その疑問を明らかにするため、第三者委員会による捜査の検証を強く求めた。 午後2時過ぎ、大川原正明社長(76)は移動中の電車内で一通のメールを受け取った。警視庁と東京地検が上告を断念し、謝罪を予定しているとの知らせだ。「やっと謝罪という言葉が出た」。謝罪は2021年7月に起訴が取り消された時から、一貫して求めてきたことだった。 その後の会見で大川原社長は、逮捕されて先が見通せないなかで支えてくれた人として、社員とその家族を挙げ、「支えてくれた人たちにも分かるような謝罪をしていただきたい」と力を込めた。 警視庁と東京地検はこの日、組織内部で捜査を検証すると発表したが、大川原側が外部の目による検証を求めているのには理由がある。警視庁公安部が一度は検証アンケートを試みたものの、捜査員の回答を自ら廃棄したからだ。 大川原代理人の高田剛弁護士は「都合の悪い資料を見つけたら廃棄するのではないか。廃棄の前例がある以上、透明性と公平性が担保された検証でないと意味がなく、真実は出てこない」と疑問を呈した。 東京高裁判決は1審より踏み込む形で、公安部と東京地検の捜査を違法と認定した。大川原側は「事実上の捏造認定」と評価する。訴訟では3人の現職警察官が法廷で捜査を批判し、高裁判決につながった。 大川原社長とともに332日間勾留された元取締役の島田順司さん(72)は「正義を貫いてあれだけ正直に語ってくれた3人を排除するようなことはあってはならない。彼らに警視総監賞をあげるような組織に変わってほしい」と話した。 違法捜査の過程では、元顧問の相嶋静夫さん(享年72)が亡くなった。長男(51)は「訴訟は一区切りしたが、時間がたっても怒りは消えない。できることなら時計を戻してもらいたい」と声を詰まらせた。今後については「今日、やっとスタートラインに立った。これで終わりではない。多くの警察官が、自分たちの組織が正しいことをやるのか固唾(かたず)をのんで見守っていると思う」と語り、徹底した検証を求めた。【遠藤浩二】

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