「一緒に死にたかった」女子高生を樹海へ連れ込んだ男は…SNSで″志願者″を募る者の「秘めた思惑」

髪を赤く染めた、どこにでもいそうな若い男は、10社ほど集まった報道陣に気がついたのか、つかなかったのかも分からないような様子で悠然と護送用の車両に乗り込んでいった──。 6月23日にさいたま地検に送検されたのは、岐阜県美濃加茂市の職業不詳、覚間悠仁容疑者(21)。8日にSNSで誘い出した女子高生を山梨県の河口湖駅付近の路上から同町の駐車場まで徒歩で連れ去った未成年者誘拐の疑いで、21日に埼玉県警に逮捕された。 「6月15日に河口湖駅から10km以上離れた富岳風穴前交差点近くの青木ヶ原樹海で、首をつった状態で死亡している女子高生の遺体を観光客の男性が発見しました。女子高生は8日午前に学校に行くと言って外出してから帰宅しておらず、自宅の部屋には自殺をほのめかすような置き手紙があったことから、家族が浦和署に行方不明者届を出していました」(社会部記者) 防犯カメラの捜査では8日夜に女子高生と覚間容疑者が河口湖駅で合流し、河口湖町の駐車場まで徒歩で移動。さらに樹海のほうへ歩いていく姿が映っていたという。そして翌9日午前8時ごろの映像では覚間容疑者が一人で樹海のほうから出てくる様子が映っていた。 「覚間容疑者は『SNSで知り合い、一緒に自殺するために誘って樹海まで連れていったことは間違いない』と容疑を認めているそうです。 また、警察は覚間容疑者の自宅を家宅捜索し、着衣やスマートフォンを押収しました。スマートフォンの解析で覚間容疑者は『自殺仲間募集』『青木ヶ原樹海』『ロープの結び方』などと検索しており、さらに事件後には『樹海ニュース』『行方不明者ニュース』『埼玉行方不明者』と検索していたことが判明しています。事件が発覚したかどうかを調べていたのかもしれません」(同前) 警察では覚間容疑者が女子高生の自殺を手助けした疑いがあるとみて、調べをすすめているという。 SNSで「一緒に死にませんか」と仲間を募ったり、死をほのめかす投稿に「手伝います」などと誘うメッセージは現在も後を絶たないという。だが、親切心ではなく、自身の欲望を満たすためだけに声をかける者は少なくない。 6月27日には世間を震撼させた『座間9人殺害事件』の白石隆浩元死刑囚の刑が執行された。白石元死刑囚はSNSなどで知り合った自殺志願者を次々に自宅アパートに呼び寄せて殺害。金品を奪ったり性交するなどしていた。ここ最近で自殺志願者がSNSを介して巻き込まれた事件をふり返ってみよう。 ◆6人の自殺(未遂含む)に関与した福島の事件 まだ記憶に新しいのは今年1月31日に福島県警に逮捕された福島市の無職の男(36)の事件だ。同9日に同県田村市の林道に止めた乗用車内で自殺した20代女性に、自殺するための道具を用意した容疑だった。 その後の調べで、県内で起きた3人の自殺幇助事件(うち1人は自殺未遂)に関わっていることが判明。被害者の中には18歳未満の女性も含まれていた。被害者4人はいずれもSNSに自殺願望をほのめかす投稿をしていた。男は自殺幇助だけでなく、未成年の被害女性と性行為をした県青少年健全育成条例違反や、被害者の口座から現金16万円を引き出した窃盗罪でも起訴されている。 また、男は6月23日には’23年9月に山形県の10代女性の自殺を手伝った件でも自殺幇助と未成年者誘拐で再逮捕・起訴されており、栃木県の10代女性の自殺幇助未遂事件にも関与していた疑いがあるという。 ◆わいせつ目的で自殺志願者に近づいた埼玉の事件 ’22年10月に横浜市の女子中学生への自殺幇助の疑いで逮捕されたのはさいたま市に住む建設関連会社社員の男(当時28)だった。男はわいせつ目的でSNSで自殺願望を書き込む女性を探しては連絡をとっていた。女子中学生もSNSで知り合い、同年9月20日に自宅へ連れ込んで、同23日に相模原市内の橋へ連れていき、足を支えて手すりを越えさせたという。女子中学生の遺体は同29日に近くの川で発見された。 男は裁判で「精神的に不安定な女性に連絡すれば、自分に興味を持って会ってくれるかと思った」と供述。それまでにも5~6人と会っていたことを明かした。男は’23年8月に懲役5年6ヵ月の判決を受けている。 ◆自身の殺人願望をみたしたかった埼玉の事件 また、埼玉県警に殺人容疑で逮捕、6月18日に送検されたさいたま市の無職、斎藤純容疑者(31)には’18年に茨城県在住の女性(21)を殺害した容疑がかかっている。女性には自殺願望があり、SNSで知り合っていた。斎藤容疑者は「小さい頃から殺人願望があった」と供述しており、「自殺願望者であれば警察の捜査もなかなか届かない。私には好都合だった」というのが、女性に近づいた理由だった。 『座間9人殺害事件』の白石元死刑囚は、自身も自殺願望があると嘘をついてSNSで被害者たちに近づいた。それは自殺願望のある女性なら、いいなりになりやすいのではないかと思ったからだという。金銭、わいせつ目的、殺人願望をかなえるため……ネットで自殺願望のある人に、一見親切そうに声をかける人間には、自身の欲望のことしか頭にない人間もいるのだ。 ・日本いのちの電話連盟 電話 0570-783-556(午前10時〜午後10時) TOPページ ・よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) 電話 0120-279-338(24時間対応。岩手県・宮城県・福島県からは末尾が226) よりそいホットライン ・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談 電話0570-064-556(対応時間は自治体により異なる) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html ・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧) https://jscp.or.jp/soudan/index.html

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