20日投開票の参院選では、与野党党首らが各地で支持を訴え、警察当局による要人警護も厳戒レベルが増している。8日で発生から3年となる安倍晋三元首相銃撃事件など、過去3度の国政選挙で単独テロを計画・実行する「ローンオフェンダー(LO)」による事件が起きたためだ。従来は困難とされたLOの前兆情報を集めるべく、警察庁は選挙期間中、「LO脅威情報統合センター」を設置。全国の警察と連携したLOの「封じ込め」が至上命題となる。 参院選が公示された3日午前、石破茂首相が自民党総裁として第一声を上げた神戸市中央区の東遊園地の演説会場。「ご協力お願いします」。訪れた聴衆には金属探知機を使った入念な手荷物検査が実施され、数メートルごとに制服や私服姿の警察官らが立つ。首相と聴衆エリアの間は鉄柵で仕切られ、距離は10メートルほど。演説を終えた首相が聴衆に近づいて握手を交わし始めると、警護の目はいっそう鋭さを増した。 令和4年7月の参院選では安倍氏が奈良市で応援演説中、山上徹也被告(44)に銃撃され死亡。5年4月の衆院補選でも和歌山市で演説中の岸田文雄前首相に向け、木村隆二被告(26)が爆発物を投げ込んだ。以降、要人の演説会場では主催者に協力を求め手荷物検査を徹底。「理解が進んだ」(警察幹部)こともあり、聴衆が鉄柵などで囲うエリアに入るスタイルも定着した。 ただ、両事件に加え、6年10月の衆院選では自民党本部・首相官邸が襲撃される事件が発生。山上被告や木村被告ら逮捕・起訴された3人は、いずれも組織的な背景がないLOと認定された。捜査関係者は「事前にLOを探知するのは至難の業だ」と話す。 ■投稿から特定 安倍元首相銃撃事件では選挙中の警備体制が問題視され、事件翌月に警護要則が改訂された。警察庁は改訂から今年5月末までに、都道府県警が作成した警護計画案約9700件を事前審査し、約74%を修正。手荷物検査の強化などで今年1~5月、刃物などの危険物が見つかったケースも約20件あった。 現場の対策とともに力を入れるのが、従来は困難とされてきたLOの前兆情報の収集だ。警察庁は4月、道府県警の公安担当課に担当班・係を設置。警視庁も同月、全国初のLO専従課が発足させた。交流サイト(SNS)上で要人や候補者らへの攻撃を示唆する人物の情報を収集するほか、爆発物や凶器の製造につながる資材の購入なども警戒する。不動産業者や爆発物原料の販売業者にも協力を求める。