初回から、いい意味で違和感だらけ。そのおかげでグイグイ引き込まれた。 髙橋海人×中村倫也のダブル主演で7月4日(金)にスタートした『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)。 舞台は謎に包まれた新型ドラッグ「DOPE」が蔓延している近未来の日本。「DOPE」は高い致死率にもかかわらず、服用するとまれに特殊な異能力を覚醒させるため、手を出す者があとを絶たない。 「DOPE」で異能力を手に入れた者をドーパーと呼ぶが、ドーパーによる凶悪犯罪が急増したため、厚生労働省の麻薬取締部は、“異能力には異能力を” ということで、生まれながらに異能力を持った人材を集め、特殊捜査課(特捜課)を設立。 そして、特捜課に新人として加わった正義感が強い才木優人(髙橋)と、非常識で型破りな先輩・陣内鉄平(中村)がバディを組むことに。 異能力とはいわゆる超能力のようなもの。たとえば才木は「未来予知」、陣内は「超視覚」を持っており、第1話では手から炎を放出するドーパーや電撃を放出するドーパーが登場した。 このドラマは、「DOPE」の取り締まりや犯罪を起こしたドーパーの逮捕を目的とした特捜課の面々の活躍を描く物語だが、誤解を恐れずに評するなら、異能力バトルマンガの要素を持ったトンデモSFとも言える。 そんな『DOPE』第1話には、3つの大きな違和感があった。 ■【1つめの違和感】中村倫也と井浦新の謎関係 まずは最大の違和感にして、大半の視聴者の頭に「?」が浮かんだであろう要素について。 物語冒頭、井浦新演じる謎の男・ジウに依頼され、中村演じる陣内が「超視覚」を使って大物政治家を長距離から狙撃するシーンが描かれた。その後も、ジウが陣内に情報提供するシーンがあった。 陣内と協力関係にあるため、一見するとジウは特捜課の仲間のようにも思えるのだが、炎を放出するドーパーに「DOPE」を渡していたのがジウであり、第1話終盤で犯罪シンジケート「白鴉(ハクア)」のメンバーだと判明。 陣内は、特捜課と敵対する犯罪組織のジウと裏でつながっているというわけである。 ジウは黒幕やラスボスといった風格を漂わせており、そんな人物に通じているため、しょっぱなから主人公の1人の闇堕ちが明かされたという可能性も考えられる。 だが、ジウがあまりにも怪しいため、陣内が闇堕ちしているわけではなく、逆にいかにも悪役といったジウが実は味方だったり、中盤から仲間になったりする可能性もありそうだ。 ■【2つめの違和感】伊藤淳史の急な死亡シーン 続いての違和感は、伊藤淳史演じる厚生労働省の審議官・山口始が、レギュラーメンバーかと思いきや、第1話中盤であっさり死亡してしまったこと。 山口は熱い想いを持って特捜課設立に尽力したとされており、特捜課メンバーからの信頼も厚いキャラ。髙橋演じる才木をスカウトしたのも彼だった。 そんな山口は、炎のドーパーと交戦中、才木をかばって全身を焼かれ、亡くなってしまう。 しかし、山口が炎に包まれるところは描かれたが、倒れ込んでからは一度も山口が画面に映されることはなく、死ぬ間際の言葉もなかった。山口の体が映されないことや最期のセリフもなく退場となったのは、かなり不自然な演出に感じられた。 また、山口が焼かれてしまったことに才木は取り乱していたが、途中から助けに現れた陣内に動揺する様子がなかったのも違和感があった。 この不自然な演出は、山口もなんらかの異能力者で、実は生きているという伏線ではないか。細胞を超再生できる異能力や幻覚を見せられる異能力などを持っている設定にすれば、いくらでも再登場させられるだろう。悲しんでいる様子がなかった陣内は、山口の生存を知っているという可能性もありそうだ。 さらに深読みするなら、もしラスボス然としているジウが味方だったとすると、正義の人格者的に描かれている山口が、闇堕ちしたラスボスという展開もありえるかもしれない。 ■【3つめの違和感】主人公2人の “仲よし” 写真 最後の違和感は、本作のホームページなどにも使われているポスタービジュアル。 髙橋演じる才木が屈託のない笑顔で、そんな才木に中村演じる陣内が肩を組み、穏やかに微笑んでいるのだ。 バディを組む主人公2人が仲よさそうにしているわけだが、第1話視聴後にこのポスタービジュアルを見ると、違和感が沸き起こってくる。 というのも、才木は犯罪者となったドーパーも救済して更生させたいというスタンスなのに対し、陣内はドーパーにいっさい容赦なく、射殺してでも駆逐していくというスタンス。 ポリシーが正反対で意見が真っ向から対立している2人が、ニコニコしながらスキンシップまでしているポスタービジュアルは、気持ち悪いほどの仲よしアピールに感じられてモヤモヤ。 これからさまざまな事件を解決していくうち、意見の対立が解消されて仲も深まっていった近い将来の2人の姿だと言われれば、そうなのかもしれない。しかし、出会ってすぐに衝突するような不仲なバディの過剰な “仲よし写真” は不自然極まりない。 ジウや山口についての違和感があえての演出だとすると、このポスタービジュアルもなんらかのミスリードを狙っているのではないか。 本作はトンデモSFなのでタイムリープや世界線移動ができる異能力もあり、その “仲よし写真” は別の世界の主人公2人だったなんていう、ぶっ飛んだ設定の可能性もゼロではないだろう。 ――この3つの違和感でぐいぐいストーリーに引き込んでくれた『DOPE 麻薬取締部特捜課』。今夜放送の第2話でも陣内とジウは接触するようなので注目だ。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『コクハク』(日刊現代)、『日刊SPA!』『女子SPA!』(扶桑社)などにコラム寄稿