胃の中から紙、3歳女児が8日以上置き去りに 東京・衰弱死事件とは

JR蒲田駅近くのマンションで、当時3歳の長女を置き去りにして衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死容疑で母親が逮捕された事件から7日で5年がたった。この事件ではネグレクト(育児放棄)など児童虐待の背景に、「虐待の連鎖」があることが注目された。判決などから経緯をたどる。 事件の発覚は2020年6月13日。東京都大田区のマンションで「子どもが呼吸をしていない」と母親(当時24)から119番通報があった。梯稀華(かけはしのあ)さん(当時3)は、搬送先の病院でまもなく死亡が確認された。死因は高度の脱水症と飢餓によるものだった。 稀華さんは寝室で倒れており、扉は開かないようソファで固定されていた。胃の中には、飢えて食べたのか紙が見つかり、汚れたおむつを着けっぱなしにしていたためか下半身がひどくかぶれていたという。 警視庁の捜査で、母親は稀華さんを8日間以上自宅に置き去りにして、当時の交際相手がいる鹿児島県に行っていたことが判明した。母親は同7月7日に保護責任者遺棄致死容疑で逮捕され、その後、起訴された。 22年に始まった公判では、母親が小学生の頃に親から受けた壮絶な虐待の経験が明らかになった。包丁で刺されたり、風呂に沈められたりしたほか、体を縛られた上でごみ袋に入れられ、食事なしで数日間放置されることもあったという。 東京地裁は22年2月、懲役8年の実刑を言い渡し、事件の背景の一つに母親の「成育歴」を挙げた。 虐待を受けながらも適切なケアを受けずに育った被告は、▽人を信頼できない▽相手に本心を伝えられない▽相手の要求に過剰に応えようとする――といった性格傾向になったと指摘。稀華さんを放置するなどの判断に「複雑に影響を及ぼしている」としていた。(藤田大道)

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