全国的に問題となっている警察官をかたる特殊詐欺。静岡県内でも被害が急増しています。巧妙なその手口とは?!被害に合う寸前だった話を聞くことができました。 (出典:警察庁ウェブサイト・詐欺事件映像から) 「わたくし大阪地検特捜部検事の石野と申します」 検事をかたり、画面越しに身分証明書を見せる男。 (出典:警察庁ウェブサイト・詐欺事件映像から) 「事情聴取ですが、双方向の音声と片方の映像による方式で行って、全過程録音録画することで法的な効力をもつものとなる」 警察の制服を着て被害者にビデオ通話をする男。一見、本物の警察官にも見えますが…実は2人とも偽物の警察官。実際にあった詐欺事件の映像です。 今、全国的に増加しているのが警察官をかたる特殊詐欺。警察庁によりますと、2025年5月時点で、警察官などをかたり捜査目的で現金などをだまし取る「ニセ警察詐欺」の認知件数は3816件、その被害額は316.1億円。○年前の〇倍に増加しているのです。 静岡県内でも、警察官を装った人物による特殊詐欺は急増しています。 県警によりますと2025年の県内の被害件数は、5月末の時点で85件、被害額は約7億7900万円となるなど、前年同時期の被害額、約9000万円と比べると大幅に増加していることが分かります。 実際に被害に遭いそうになった静岡市に住む40代の女性です。きっかけは2025年5月中旬にかかってきた携帯電話会社を名乗る人物からの電話でした。 (40代 女性) 「なんか信じちゃったんですよね。今、思えば、こんなんで信じるのおかしいでしょっ…て思うけど」 突然かかってきた電話のなかで、女性は「あなたのメールアドレスから迷惑メールがたくさん送られている。一度、電話をとめる必要がある」などと言われたと言います。 さらに、そのまま別の電話番号から連絡が入り、電話口に現れたのは、福岡県警の刑事を名乗る男でした。 (刑事を名乗る男) 「特殊詐欺の主犯があなたの口座に何億ものお金を振り込んだ」 男はこう説明すると、作り込んだ逮捕状などのデータを女性に送付。検察官の名前などが記載されているほか、福岡地方裁判所の印鑑が押されていて信じてしまったといいます。さらに、電話口には検察官も登場するなど、複数人が登場するリアルな演技に女性は半ばパニック状態に…。 (40代 女性) 「振り込まないと優先調査を受けることができなくて、1週間以内にあなたは捕まることになっているから、もう、きょうあしたには振り込まなきゃいけないって言われて」 刑事をかたる男らとのやりとりは2日間にも及びました。その間、女性は、細かく自分の行動を報告させられただけでなく…。 (刑事を名乗る男) 「AIが監視しているからネットで何かを調べてはいけない。第三者に話すとその人も容疑者になる」 などと脅され、誰とも連絡が取れないほど精神的に追い込まれました。 (40代 女性) 「逮捕されたくないから言う通りにしなきゃっていうのが一番」***** その後、女性は言われるがまま銀行へ行き、500万円余りを自分の口座から引き落としたということですが、振込に指定された口座が個人名義だったことなど、怪しいと思う点がいくつかあったことから勇気を出して警察に相談。振り込む寸前でだまされていることに気づくことができました。 (40代 女性) 「高齢者とかはあるんだろうなと思ってたけれど、自分はまだ判断能力がある年齢だし、(詐欺が)自分にふりかかることはないかなと。なんかだんだんおかしいなと思ってて、でも本当に刑事だったらやばいなと思って。なんか信じちゃったんですよね」 高齢者だけでなく幅広い世代で全国的に被害が増える警察官を装った特殊詐欺に対し、犯罪心理に詳しい専門家は…。 (犯罪心理に詳しい 東京未来大学 出口 保行 教授) 「わが国においては、警察というような組織だったり/権威がある組織に対して非常に社会的な信用が高い。そういう名称を使うことによって被害者に”この電話はおかしい”という疑問を持たせないようにする。そういう効果が警察の名前をかたるところでは特に大きい。権威的な組織名を名乗ると、被害者はそれを無視したり相手にしなかったりすると逆に大きなペナルティがあるのではないかと思うのが当然。それを無視したり第三者に相談するというスタンスができなくなるというところが非常に大きいと思う」 手口が巧妙化するニセ警察官詐欺。簡単にできる有効な対策があるといいます。 (犯罪心理に詳しい 東京未来大学 出口 保行 教授) 「こういう事件は、第三者に相談をひとことできるかどうかだけで、解決の糸口が変わってくる。普段から(特殊詐欺を)他人事にしない、自分事だと考えて、万が一連絡が入ったら、誰か信用できる人に相談するというような、自分の中での対処するシステムづくりが非常に大切」