1986年の福井中3殺害事件の裁判をやり直す再審で、殺人罪に問われ、服役した前川彰司さん(60)を無罪とした名古屋高裁金沢支部判決について、前川さんの弁護団は1日、検察当局が上告を断念したと明らかにした。再審無罪が確定することになり、事件から39年を経て前川さんの冤罪が晴れた。 上告には憲法違反や判例違反などの理由が必要で、理由を見いだせないと判断したとみられる。 再審判決は、警察が前川さんの知人らの供述を誘導した疑いを指摘。さらに検察が知人証言に一部誤りがあることを一審途中に把握しながら明らかにしなかったと認定した。有罪立証の柱だった「事件後、前川さんの服に血が付いているのを見た」といった知人らの証言は信用できないとし、無罪と結論づけた。 前川さんは事件翌年の87年に逮捕され、一貫して無実を主張してきた。一審無罪だったが、二審で懲役7年の逆転有罪判決が言い渡され、その後確定。第2次再審請求で、高裁金沢支部は昨年10月、再審開始を認め、検察は異議を申し立てず裁判やり直しが決まった。