化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、東京高裁から起訴を違法と認定された東京地検の捜査を検証している最高検が、立件に不利な証拠にきちんと向き合わないなど警察の捜査へのチェック機関として不十分だったと結論付ける見通しであることが関係者への取材で判明した。起訴を担当した主任検事だけでなく組織としての責任にも言及するとみられる。近く検証結果として公表する。 一方、法務・検察当局は主任検事やその上司ら起訴の決裁に関わった検事らの懲戒処分は見送る方針。大川原側は同じような冤罪事件を防ぐためには、警察・検察に厳正な処分が必要と求めており、検察に対する批判が強まるのは必至だ。 噴霧乾燥器を無許可で輸出したとして大川原化工機の社長ら3人は2020年3月に逮捕・起訴され、初公判4日前に起訴が取り消された。大川原側は国家賠償訴訟を起こし、東京高裁は25年5月の判決で、警視庁公安部の逮捕・取り調べと地検の起訴を違法と認定。東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じ、確定した。 高裁判決は、主任検事が起訴前に、大川原側から経済産業省の輸出規制省令に関する公安部の独自解釈の妥当性や、噴霧乾燥器内の温度実験の適切さについて疑義が出ているのを把握しながら、必要な捜査をせずに起訴したと認定した。 関係者によると最高検は、経産省の輸出規制省令は刑事罰を科す基準としては内容が曖昧で、経産省への省令解釈の確認を警察に任せるだけでなく、検察として自ら経産省に確認をする作業が必要だったとの見方を強めている。温度実験も大川原側の主張に十分耳を傾けなかったと結論付けるとみられる。【北村秀徳、岩本桜、五十嵐隆浩、佐藤緑平】