違法薬物事件で廃部となった日大のアメリカンフットボール部の後継組織「有志の会」のランニングバック(RB)酒井佑昌選手(3年)が26日、東京都内の日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に仲裁申し立てを行った。 2部リーグ所属の取り消しと1部リーグ所属を求め、代理人の玉井伸弥弁護士とともに書類を提出。申し立て後には東京地裁の司法記者クラブで会見に臨み、「批判されることは分かっているけど、残っている選手は事件とは関係ない選手。新しいフェニックスをつくっていこうと動いている」と語った。 フェニックスの愛称で知られた日大アメフト部を巡っては、部員が違法薬物事件で逮捕されたことを受け、23年12月に廃部が決まり、昨年2月に関東学連を退会。薬物問題には関わっておらず、一定の参加条件を満たした元部員や新入生が昨年5月から「有志の会」として活動している。 有志の会は約70人で活動しており、当初は半数ほどの選手で申し立てを行う予定だったが「チームメートは“世間から叩かれるんじゃないか”と怖くなってしまった」と酒井選手。今回の申し立ては有志の会としてではなく、個人として行う。 関東学連は当初、3部所属が妥当としていたが、他校との体力差や経験値差による安全面の不安を考慮。競技力、安全面、公正さ、公平性を総合的に踏まえ、関東大学リーグ2部から再出発することが適切だと判断した。 関東大学リーグは1部がTOP8とBIG8で構成されており、実質3部相当の2部からスタートする場合、大学日本一を決める甲子園ボウル出場には最低3シーズンが必要。3年生にとっては、甲子園ボウル出場の可能性が最初から消滅していることになる。 来月6日にはリーグ戦が開幕するため、玉井弁護士は「緊急仲裁」として申し立てると説明。そのうえで「酒井さんは当然、薬物問題にも一切関わってない。部としての責任は廃部という形で果たしていると思う。1人の勇気で一部の望みに懸けて申し立てた。なかなか難しいものだと承知しているが、なんとか検討いただきたい。BIG8に所属できれば、来年の甲子園ボウル出場はあり得る。すぐに1部所属が難しいとしても、何らかの形で1部との対戦機会を与えていただくとか、何らかの措置をいただくのであれば一歩前進だと思う」と話した。 ≪日大アメフト部薬物事件の経過≫ ▼23年8月 寮内で大麻や覚醒剤成分を含む錠剤が見つかり、部員1人を逮捕 ▼23年9月 日大から無期限活動停止処分が科される。部の寮も閉鎖 ▼23年12月 廃部が正式に決定 ▼24年2月 関東学生連盟から脱退 ▼24年5月 事件に関与していない学生を対象とした後継組織「有志の会」が発足 ▼25年6月 関東学生連盟が「有志の会」の加盟を承認